中小企業の事例

中小建設会社7社のAI導入事例

大手ゼネコンの研究開発ではなく、中小建設会社が書類、検索、写真整理にAIを使った公表事例を集めました。

確認日
2026年7月28日
読了目安
約11分
対象
経営者・工事部・AI活用担当
屋外の工事現場で、現場監督がタブレットと掲示した進捗写真を照合する様子
AI生成のイメージです。掲載各社の現場や従業員を撮影した写真ではありません。

まず分かったこと

7社では、書類の下書き・検索・写真整理が中心

今回確認した7社に共通するのは、AIへ施工や法令の最終判断を任せるのではなく、人が確認できる間接業務へ範囲を絞っていることです。技術提案書の下書き、仕様書や社内資料の検索、打合せ記録の整理、工事写真の仕分けなど、すでに発生している反復作業を補助させています。

掲載した会社

中小企業に当てはまる会社だけを確認

建設業では、資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下の会社が中小企業者に該当します。本記事は、公表資料で資本金または従業員数を確認でき、会社情報で所在地も確認できた会社だけを掲載しました。大企業の事例は含めていません。

島村工業は資本金4億6,800万円ですが、国土交通省資料の従業員区分が100〜299人であるため、従業員数の基準で対象に含めています。

7社中6社は、同じ建設業向け生成AI「光/Hikari」を使っています。製品を比べる記事ではなく、公開情報を確認できた中小建設会社の使い方を集めたものです。

7社を比較

どの業務でAIを使っているか

スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

会社公表された企業規模主なAI活用公表された変化
建昇従業員44人自治体基準・社内書類の検索、技術文書書類精度の向上と時間短縮。参照資料にAI単独の定量値はない
ヨシザワ想造建築従業員27人、資本金4,000万円法令・設計資料・社内情報の検索、提案画像調査の効率化、提案の幅の拡大
藤原工業従業員15人技術提案書の文章作成、土量・台数計算の補助社内修正の往復が半分以下に減少
吉川建設従業員213人、資本金3,000万円提案要件整理、法令検索、議事録、学習担当者の技術提案例で、作業量が約3分の1に減少
トーケン従業員85人、資本金7,000万円建築基準法・消防法・工法の検索検索を始めるまでの迷いが大きく減少
ユウテック資本金2,000万円打合せ簿、安全点検様式、対策案、仕様書検索書類作成を半自動化。参照資料に定量値はない
島村工業従業員100〜299人電子小黒板情報や被写体による工事写真の自動仕分けAIで写真整理を短縮。クラウド共有を含む運用で手戻りも削減

変化は公開資料の記載を要約しています。製品提供会社の取材を出典とする3社は、利用企業が取材で述べた内容で、比較試験の数値ではありません。

事例 01・資料検索

建昇:自治体基準や社内書類を検索し、技術文書を作る

福井県福井市の株式会社建昇は、建設業向け生成AIを自治体ごとの基準書や社内書類の検索、技術文書の作成に利用しています。ふくいDX事例集は、書類精度の向上と時間短縮を挙げています。

同じ資料には残業約20%減、測量時間約6割減などの数字もありますが、これはウェブ打刻、ドローン測量、ICT建機(デジタルデータを使う建設機械)などを含む会社全体のデジタル化による成果です。生成AIだけで達成した数字ではありません。

事例 02・法令検索

ヨシザワ想造建築:法令・設計資料の検索と提案づくりを補助

京都市のヨシザワ想造建築株式会社は、建築法令、設計図書、施工・メーカー資料、社内データを横断して質問できる環境を整えました。顧客提案では画像生成も使い、調査時間の短縮と提案の選択肢を広げる用途にしています。

法令検索の回答は入口です。適用条文、告示、自治体の取扱いを原文で確認する工程は残ります。

事例 03・文書作成

藤原工業:技術提案書の文章と数量計算を補助

大阪府吹田市の藤原工業株式会社は、技術提案書の表現を整え、社内修正の往復を減らす用途を公表しています。同社は製品提供会社の取材で、修正のやり取りが従来の半分以下になったと説明しています。

横断図から土量やダンプ台数を計算させ、経験者の算定とほぼ同じ結果になった例も紹介されています。ただし数量計算は条件の読み違いが原価と施工計画へ直結するため、元資料との照合と経験者の確認を外せません。

事例 04・文書作成

吉川建設:提案条件を整理し、構成案を早く作る

長野県飯田市の吉川建設株式会社は、技術提案の要求事項整理、文章の流れづくり、法令検索、議事録、若手の学習にAIを利用しています。同社は技術提案の一例について、作業量が従来の約3分の1、資料の密度が約4倍になったと説明しています。

白紙から文章を書かせるのではなく、要求事項と社内知識を先に整理する使い方は、自社でも取り入れやすい部分です。

事例 05・法令検索

トーケン:法令や工法を探す出発点を短くする

石川県金沢市の株式会社トーケンは、建築基準法、消防法、施工方法の調査にAIを使っています。若手社員が何から検索すべきかを整理し、経験者へ相談する前の準備や学習にも利用しています。

同社が変化として挙げたのは、「どこから調べるか迷う時間が大幅に減った」ことです。法令適合の判定をAIに任せた事例ではありません。

事例 06・書類作成

ユウテック:打合せ簿や安全点検様式を半自動で作る

三重県紀宝町のユウテック株式会社は、国土交通省中部地方整備局の事例で、現場書類の半自動作成を公表しています。打合せ簿の整理・添削、安全管理の点検簿様式、現場条件に応じた対策案や工法案の作成、共通仕様書などの検索が対象です。

削減時間の数字は公表されていません。まず定型書類の下書きと資料の所在確認に絞った例として参考になります。

事例 07・写真整理

島村工業:AIで工事写真を仕分け、複数人で確認

埼玉県川島町の株式会社島村工業は、電子小黒板の情報や被写体を基にAIが工事写真を仕分けるクラウドサービスを導入しました。国土交通省資料では、2022年6月から8現場、延べ15人が使用し、写真台帳の作成、撮り忘れの発見、差し替え指示を複数人で進めています。

同資料は、導入前後で4週4閉所から4週6閉所へ変化したとしています。ただし、これはAI仕分けだけでなくクラウド共有を含む写真管理全体の取組による変化として読む必要があります。

7社の共通点

「答えを決めるAI」ではなく「探す・整えるAI」

探す

仕様書、法令、社内文書から候補箇所を見つける。

整える

打合せメモや要求事項を、確認しやすい下書きへ変える。

分ける

大量の工事写真を条件別に仕分け、人の確認を早くする。

学ぶ

若手が質問を整理し、経験者へ相談する前の準備に使う。

今回確認した事例は、建設業向けサービスや既存の写真管理サービスへ自社資料を組み合わせた会社が中心です。自社で試す際は、開発力よりも「対象業務を狭く決める」「正しい資料を用意する」「確認者を決める」ことが先です。

自社で試す

1業務・10件ずつ・2週間から

  1. 架空データで試す1業務を選ぶ。 日報の整形、議事録の論点整理など、人が元資料と照合できる業務に限定します。
  2. 実データを使う前に契約と社内ルールを確認する。 入力データの保存、学習利用、利用できる人の範囲を確認します。
  3. 過去10件を基準値にする。 作成だけでなく、確認、修正、差し戻しまで含む完了時間を記録します。
  4. 同程度の別の10件で2週間試す。 可能なら案件をAIあり・なしへ振り分けます。機密を含まない架空・匿名データから始めます。
  5. 結果を比較する。 完了時間、修正回数、見落とし、一部の担当者しか使えない状態になっていないかを確認します。

最初にAIを導入する業務の決め方本当に仕事が楽になったかを見極める方法で、自社で試す手順を確認できます。

自社へ取り入れる

他社の数字より、再現できる使い方を見る

  • 対象範囲を確認生成AI単独の成果か、クラウド、建設機械、業務変更を含む会社全体のデジタル化による成果かを分けます。
  • 最終判断を残す施工、安全、構造、法令、契約、積算の判断は、責任者や有資格者が元資料と照合します。
  • 情報管理を先に決める入力できる情報、保存、学習利用、利用できる人の範囲、退職者のアカウント処理を導入前に定めます。

AIへ入力する前の情報管理もあわせて確認してください。

確認した資料

各社の公表資料と会社情報

各資料の内容とリンクは2026年7月28日に確認しました。