建設技術図鑑

ニューマチックケーソン工法とは?水の下で、空気の部屋を沈める

圧縮空気で地下水を押し返し、巨大な箱を沈めて橋や地下構造物を支えるニューマチックケーソン工法。仕組み、万代橋などの事例、発注前の管理項目を解説します。

更新日
2026年7月11日
読了目安
11分
テーマ
橋梁基礎・地下構造物・圧気施工
圧縮空気を送った作業室で掘削し、鉄筋コンクリートのケーソンを沈める断面図の仕様

水の下に、乾いた作業室をつくれるのか

地下水が湧く深い地面で、乾いた部屋をつくりながら巨大な基礎を沈める。ニューマチックケーソン工法は、その一見矛盾した仕事を現実にします。

橋の下、水門の下、下水ポンプ場の下。地上で造った鉄筋コンクリートの箱を、少しずつ深く沈めます。底には人と機械が入る作業室があります。

この記事では、なぜこの手間のかかる工法が残り続けたのか、施工の仕組みと現場事例、発注時に外せない確認点を整理します。

なぜ水を抜かずに、空気で押し返すのか

深い掘削で地下水を大量にくみ上げると、周囲の地盤や井戸に影響が及ぶことがあります。近くに道路、鉄道、既設構造物があれば、地盤の動きも無視できません。

そこで作業室の空気圧を地下水圧に見合う状態まで高め、底から水が入るのを抑えます。地上から箱を継ぎ足し、底で土を掘り、掘った分だけ躯体を沈下させます。

狭い敷地で大きな支持力を得たい時にも利点があります。仮設の土留めに頼らず、沈める躯体が完成後の基礎や地下構造物になります。

ニューマチックケーソンでは何が沈み、何を管理するのか

ニューマチックケーソン工法は、下部の作業室に圧縮空気を送り、地下水の流入を防ぎながら掘削・排土を行って、ケーソン躯体を沈設する工法です。定義はここまでです。

重要なのは、空気圧だけではありません。刃口の下を掘り過ぎれば傾き、掘り残せば沈まない。沈下量、姿勢、地盤、空気圧、排土量を同じ時間軸で見ます。

  • 作業室圧縮空気で水を押し返し、掘削する空間です。
  • 刃口躯体下端の鋼製部。地盤を切りながら沈む位置を定めます。
  • マンロック人が気圧を変えながら出入りする設備です。
  • マテリアルロック掘った土を地上へ出すための気密設備です。

圧気下の作業では、減圧時の健康障害を防ぐ計画も施工品質の一部です。工程を急いで解決できる問題ではありません。

万代橋と港湾施設で、どんな難題を支えたのか

永代橋・清洲橋の復旧

オリエンタル白石の公開資料によると、関東大震災で倒壊した隅田川の永代橋、清洲橋の復旧は、日本に導入された初期の適用例です。川の中で橋を支える基礎に、この工法が選ばれました。

新潟市の万代橋

信濃川に架かる万代橋も、同資料が挙げる代表例です。1928年に完成した橋は、1964年の新潟地震で周辺の橋が大きな被害を受けた際も、被害が軽微だったと紹介されています。工法だけで安全を断定する材料にはなりませんが、深い基礎の役割を考えるきっかけになります。

神戸港第7・8突堤

神戸港の第7・8突堤もニューマチックケーソン基礎の事例です。阪神・淡路大震災後に基礎の耐震性が注目されたと、施工者資料は説明します。港湾、河川、橋梁では、地震時の水平力まで含めて基礎を考えます。

面白さは、完成した構造物を施工装置にすること

この技術の面白さは、仮の箱を沈めて後で捨てるわけではない点です。地上で安全に造り足した躯体が、そのまま地下の完成構造物になります。

地盤を直接見て支持層を確認し、基礎地盤の支持力を載荷試験で確かめられることも特徴です。その代わり、少しの姿勢変化と人体への負荷を長い工程で管理し続けます。

沈設が進むほど、地下水圧と周辺条件は変わります。設計の計算結果を守りながら、現場で得る地盤情報を反映する必要があります。

雨、河川水位、近くの掘削も条件を変えます。現場の管理者は、計画どおりに進んだ日だけでなく、変化が起きた日の判断を記録します。

大きな機械の力だけで進める工事に見えて、実際には地盤、空気、コンクリート、作業者の状態を同時に読む技術です。

発注前に、圧気計画のどこを確認するか

施工計画書で確認したいのは、設備の台数だけではありません。地盤の変化を誰が判定し、圧力や掘削を誰が止めるのかまで明記されているかを見ます。

特に近接施工では、地上の沈下計測と作業室の管理値を別々に扱えません。異常値が出た時の連絡順、減圧・避難、再開の条件まで、発注者と施工者で共有します。

完成後に見えなくなる部分だからこそ、沈設日報、圧気記録、コンクリート打設記録、地盤確認の記録を引き渡し資料に含めるよう求めます。

確認項目確認する理由聞く内容
地盤と水圧必要な空気圧と沈設計画が変わります。支持層、水位、土質をどう設計に使うか。
圧気作業計画安全と工程が直結します。入退室、減圧、作業時間、緊急時の体制。
沈下・姿勢管理傾きは後工程で戻しにくいためです。掘削位置、沈下量、許容値、補正方法。
近接構造物地下水や地盤の変化を小さくする必要があります。変位計測と工事を止める判断基準。
完成後の用途基礎か地下空間かで配筋・開口が変わります。躯体を仮設でなく本体としてどう設計するか。

許可業種から候補をどう探すか

ニューマチックケーソンという許可業種はありません。橋梁基礎、立坑、地下構造物を総合的に扱う案件では、土木一式工事を起点にします。

許可情報は候補を絞る入口です。圧気施工の実績、健康管理体制、近接施工の計測計画は、個別に確認してください。

参考にした技術資料

工法の適用可否は、地盤調査と施工計画で決まります。本文では次の公開資料で仕組みと事例を確認しました。

よくある質問

ケーソンの中で人が働くのですか?

作業室に人が入る方式があります。高気圧環境での作業になるため、入退室、作業時間、健康管理を含めた圧気管理が必要です。

地下水を抜く工法とは何が違いますか?

地下水位を下げず、圧縮空気で作業室への流入を抑える点が大きく異なります。

住宅の基礎にも使えますか?

通常は使いません。橋脚、ポンプ場、立坑など、大きな荷重や深い地下空間を扱う工事向けです。