建設技術図鑑

地盤凍結工法とは?氷の壁で水を止める

地面を凍らせて地下水を止める地盤凍結工法。仕組み、隅田川幹線や福島第一の事例、発注前に見る許可業種と管理ポイントを整理します。

更新日
2026年7月7日
読了目安
10分
テーマ
地下工事・止水・地盤改良
地盤凍結工法で凍結管を使い地下水の流入を止める断面イメージ

地面を凍らせて、地下水を止める

地面を凍らせて、氷の壁で地下水を止める——。

そう聞くと、SFのように感じるかもしれません。けれど東京都下水道局や東京電力は、地下水対策が必要な現場でこの技術を採用しました。

この記事では、仕組み、使われた現場、発注前の確認ポイントを整理します。

なぜ、わざわざ地面を凍らせるのか

地下工事で怖いのは、水そのものだけではありません。水を含んだ砂が流れ込むと、掘削面が崩れます。作業空間も一気に不安定になります。

ポンプで水を抜ける現場ばかりではありません。周りに鉄道、道路、下水道、ガス管があれば、大きく掘り広げにくい。そこで設計者は、掘る場所の周辺だけを冷やす選択肢を持ちます。

狙いはシンプルです。水の通り道を一時的に止め、地盤の崩れも抑える。地下で安全に作業するための時間をつくるわけです。

向いている現場

地下水が多く、開削しにくい地下工事。シールドの到達部や地中接合、立坑まわりなど、限られた範囲を守りたい場面です。

慎重に見る現場

地下水の流れが速い、凍結範囲が長い、近接構造物が沈下に弱い。こうした条件では、補助対策と計測管理が重くなります。

凍結管を入れると、地下で何が起きるのか

地盤凍結工法は、地中に凍結管を入れて冷媒を循環させ、土中の水を凍らせて掘削範囲を守る工法です。

凍結管の周りから温度が下がる仕組みです。凍った地盤が、水と土砂の動きを抑えます。冷媒はブラインや液体窒素などです。

ポイントは、凍らせること自体より「つながったか」の確認です。地中では目で見えません。測温管の値、間隙水圧、排水状況などを組み合わせて判断します。

地下水流が速いと、流れる水が熱を運びます。凍結しにくい場所では、凍結管の間隔を狭める、冷却力を上げる、上流側で水の流れを弱める、といった対策が候補です。

  • 凍結管地中に入れて、周囲の地盤から熱を奪う管。
  • 冷却設備冷媒を低温に保ち、凍結管へ循環させる設備。
  • 温度計測凍結の進み具合を確認するための管理項目。
  • 維持冷却施工中に凍った状態を保つための運転。
管理することなぜ重要か
地中温度凍結の進み具合と、維持中の温度上昇を読むため。
閉塞確認水の通り道が残っていると、掘削時に流入リスクが残るため。
地下水流流速が速いと冷却効果を奪い、凍結の成立を遅らせるため。
解凍時の沈下凍った地盤が戻る過程で、周辺構造物に影響するため。

ここが職人技だけでなく、管理技術でもある理由です。

どの現場で地面を凍らせたのか

隅田川幹線その3工事

有名な事例の一つが、東京都下水道局の「隅田川幹線その3工事」です。施工者は東急建設株式会社。地下約40mで既設シールドトンネルを拡幅し、新しい幹線を地中で接続しました。

計画凍土量は3,700m³。拡幅部の上には道路や京成電鉄の施設があり、地下には多数の埋設管がありました。地上から大きく開削する選択は取りにくい条件です。

この現場で難しいのは、凍らせた後です。凍結中は凍上、解凍時は沈下を見ます。建設機械施工誌は、地中温度から凍土厚を推定し、三次元モデルで凍土の形を把握する管理を紹介しています。

福島第一原子力発電所の陸側遮水壁

福島第一原子力発電所の陸側遮水壁は、強く記憶に残る大規模事例です。東京電力ホールディングスは、建屋に地下水を近づけない対策として凍土方式を説明しています。日建連の土木賞ページは、施工者を鹿島建設株式会社と記載しています。

規模も特殊です。日建連は延長約1,500m、深さ約30m、計画凍土量約70,000m³の遮水壁と説明しています。鹿島建設の資料では、凍結管1,568本、測温管359本、冷凍機30台という計画概要を確認できます。

ここでは、短期の仮設だけでは済みません。長期運用、地下水流による凍結阻害、既存埋設物、高い放射線量下での施工。通常の地下工事とは違う難しさが重なっています。

石狩湾新港発電所の海底シールド

鹿島建設は、北海道小樽市の石狩湾新港発電所1号機新設工事でも技術発表を出しました。液化CO2を冷媒に使い、海底シールドと既設放水口の接続に適用した事例です。

海底下でシールドマシンとJ字型放水管をつなぐ場面では、止水性と施工精度の両方が問われます。鹿島建設は、従来方式に比べて温室効果ガス排出量を約50%削減できることも確認したと発表しています。

面白いのは、地盤を材料として使うところ

この工法の面白さは、外から壁を運び込まない点です。現場にある土と水を、その場で一時的な構造体に変えます。

ただし魔法ではありません。温度、時間、地下水流が結果を左右します。冷やす範囲が広いほど、計測と維持管理も重くなります。

  • 水を敵にしない土の中の水を利用し、地下水の動きを抑える。
  • 必要な期間だけ効かせる永久構造物ではなく、施工中の安全を支える。
  • 温度で判断する見えない地中を、計測値で管理する。
  • 解凍後まで考える沈下や周辺構造物への影響を施工計画に入れる。

意外なのは、凍らせる技術だけで完結しないことです。地下水の勢いを弱めるために薬液注入を併用する場面もあります。冷やす力を上げるだけでなく、水の流れ方そのものを読む技術でもあります。

発注前に見るべき技術管理のポイント

ここからは、業者を探す発注検討者向けです。工法名だけで候補を選ぶと危うい。次の項目を説明できる会社か確認してください。

確認項目見る理由聞いておきたいこと
地盤・地下水調査土質、含水状態、水位、流速で冷却計画が変わるため。どの調査結果を設計条件にしたか。
凍結範囲守る範囲と掘る順序を分けて考えるため。凍結管の配置と到達判定をどう決めるか。
温度計測地中の進み具合を目視できないため。測温管の位置、管理値、掘削開始の基準は何か。
閉塞確認温度だけでは水みちの残りを判断しにくいため。間隙水圧や排水で何を確認するか。
周辺影響凍上や解凍沈下が道路、鉄道、埋設物に影響するため。変位計測と異常時対応をどう組むか。
解凍計画工事が終わった後も地盤は元の状態へ戻るため。強制解凍、自然解凍、沈下対策をどう選ぶか。
施工体制元請、専門会社、計測担当の分担が成果を左右するため。設計、冷却、掘削、計測の責任者は誰か。

参考にした技術資料

この記事は、公開資料をもとに一般的な考え方を整理したものです。個別工事への適用可否は、地盤調査と施工計画で判断してください。

よくある質問

地面はずっと凍ったままですか?

多くの地下工事では、施工中だけ地盤を安定させる仮設的な使い方が中心です。目的の作業が終われば維持冷却を止め、解凍後の沈下や周辺影響も管理します。福島第一原子力発電所の陸側遮水壁のように、長期運用を前提にした特殊な例もあります。

普通の地盤改良会社に頼めますか?

許可業種だけでは判断できません。地盤調査、地下水評価、冷却設備、温度計測、掘削計画をまとめて管理する体制が必要です。元請、専門会社、計測会社の役割分担も確認してください。

最初にどの許可業種を見ればいいですか?

地下構造物やトンネルを含む案件では土木一式工事を見ます。掘削や土留めを含む案件では、とび・土工・コンクリート工事も候補です。管路や水道施設が主対象なら、管工事や水道施設工事も確認します。