建設技術図鑑

東京駅の地下ホームは浮き上がろうとしている

地下水位が上がると、地下駅は下から押し上げられます。東京駅の地下ホームの浮上対策、上野地下駅との比較、グラウンドアンカーと地下水管理を解説します。

更新日
2026年7月11日
読了目安
10分
テーマ
地下構造物・地下水・アンカー
地下水位が上昇した東京駅の地下ホーム底盤を、地盤へ定着したグラウンドアンカーが支える断面図

重い地下駅でも、水の力には持ち上げられる

地下にある鉄道ホームが、地面から浮き上がろうとしている。直感に反する話ですが、地下水は構造物の底盤を下から押します。

東京駅の総武・横須賀線地下ホームは、地下水位の上昇で浮力による損傷が懸念され、グラウンドアンカーで固定する対策が行われました。東京都も、東京地下駅でアンカー対策がなされたと公開しています。

これは水漏れの話ではありません。都市の地下水が回復したことで、かつて低い水位を前提に造られた大きな箱に、上向きの荷重がかかる話です。

なぜ地下水位が上がると、駅の底が持ち上がるのか

水の中に沈めた物体には、押しのけた水の重さに応じた上向きの力が働きます。地下構造物でも、周囲の地下水圧が底盤を下から押します。

構造物自身の重さ、上に載る土や舗装の重さが十分なら、上向きの力に抵抗できます。地下水位が上がり、浮力が増えると、このつり合いが変わります。底盤のひび割れや、構造物全体の変位を招く恐れがあります。

東京都の資料は、地下水位が低下していた時代に造られた地下構造物が、水位回復後に浮き上がりの課題を抱えたことを示しています。

グラウンドアンカーは、浮力をどう地盤へ逃がすのか

浮上対策の一つがグラウンドアンカーです。底盤から地盤へ長い緊張材を定着し、引き抜こうとする力を地盤へ伝えます。東京駅では、地下水圧下でも施工できる永久グランドアンカーが対策に使われました。

アンカーは単に棒を打つものではありません。先端の定着地盤、自由長、緊張力、防食、施工中の地下水、既設構造物との離れを設計します。施工後も荷重を受け続けるため、長期の計測と維持管理が前提です。

  • 地下水位浮力を生む水圧の基礎となる観測値。
  • 浮力構造物を下から押し上げる水圧による上向きの力。
  • 定着地盤アンカーの力を地中へ伝える、十分な抵抗を持つ地盤。
  • 緊張力アンカーに与え、構造物の浮上を抑える管理対象の力。

東京駅、上野地下駅、東京駅日本橋口で何が違ったのか

東京駅の総武・横須賀線地下ホーム

KTB協会の施工事例は、1972年建設の東京駅地下ホームで地下水位の上昇が続き、浮力による損傷が懸念されたことを記録しています。永久グランドアンカーでの対策区間は160m、施工本数は70本です。

上野地下駅

東京都は、上野地下駅で地下水位の上昇に対し、鉄製おもりを置く一次対策の後、アンカー対策が行われた経緯を紹介しています。同じ浮力でも、施工できる場所と既設構造物の条件で選択肢は変わります。

東京駅日本橋口の複合ビル

大林組は、東京駅日本橋口の複合ビルで、地下水による浮き上がりを考慮して永久鉛直アンカーを設置したと記録しています。新設の建物なら、基礎計画の段階から浮力を荷重条件に入れられます。

面白さは、地下水の回復が構造物の荷重条件を変えることにある

地下水位の回復は、水環境には望ましい変化になり得ます。しかし地下構造物には、設計時より大きな浮力を与える場合があります。都市の地下では、環境の改善と構造物の安全が別々に進みません。

東京都の資料は、地下水を下水へ流すだけでなく、立会川へ導水する取り組みにも触れています。地下水を単に排除するのでなく、地域の水循環と構造物の安全を同時に考える発想です。

発注前に、浮力対策の計算と監視をどう確かめるか

確認項目確認する内容
地下水観測長期の水位変動、豪雨時、揚水規制後の変化を設計条件へ反映しているか。
浮力の照査構造物重量、上載荷重、地下水圧、地震時をどの組合せで確認したか。
アンカー設計定着地盤、必要本数、緊張力、防食、施工順を既設図面と照合しているか。
施工時の影響削孔が既設躯体、鉄道設備、埋設物、地下水の流れへ与える影響を確認する。
維持管理水位、変位、アンカー力の観測点、判定値、異常時の連絡体制を決める。

浮力対策は、アンカー本数だけで評価できません。地下水の将来変動をどう置いたかが、計画の土台になります。

許可業種から候補をどう探すか

地下駅や大規模な地下構造物の対策は、土木全体を管理する体制を入口にします。アンカーや掘削の専門工程も切り分けて確認します。

許可と並行して、供用中の鉄道近接工事、永久アンカー、地下水計測の実績を確認してください。

参考にした技術資料

地下駅の浮力対策でよくある質問

地下駅は本当に水で浮くのですか?

地下水による上向きの力が、構造物と上載土の重さを上回れば浮き上がりの危険があります。実際に浮く前から、変位や地下水位を計測して対策します。

地下水をくみ上げ続ければ解決しますか?

周辺の地盤沈下や水循環に影響するため、単純な揚水は解決策になりません。

アンカーを入れれば保守は不要ですか?

不要ではありません。地下水位、アンカーの緊張力、構造物の変位を継続して確認します。