重い地下駅でも、水の力には持ち上げられる
地下にある鉄道ホームが、地面から浮き上がろうとしている。直感に反する話ですが、地下水は構造物の底盤を下から押します。
東京駅の総武・横須賀線地下ホームは、地下水位の上昇で浮力による損傷が懸念され、グラウンドアンカーで固定する対策が行われました。東京都も、東京地下駅でアンカー対策がなされたと公開しています。
これは水漏れの話ではありません。都市の地下水が回復したことで、かつて低い水位を前提に造られた大きな箱に、上向きの荷重がかかる話です。
なぜ地下水位が上がると、駅の底が持ち上がるのか
水の中に沈めた物体には、押しのけた水の重さに応じた上向きの力が働きます。地下構造物でも、周囲の地下水圧が底盤を下から押します。
構造物自身の重さ、上に載る土や舗装の重さが十分なら、上向きの力に抵抗できます。地下水位が上がり、浮力が増えると、このつり合いが変わります。底盤のひび割れや、構造物全体の変位を招く恐れがあります。
東京都の資料は、地下水位が低下していた時代に造られた地下構造物が、水位回復後に浮き上がりの課題を抱えたことを示しています。
グラウンドアンカーは、浮力をどう地盤へ逃がすのか
浮上対策の一つがグラウンドアンカーです。底盤から地盤へ長い緊張材を定着し、引き抜こうとする力を地盤へ伝えます。東京駅では、地下水圧下でも施工できる永久グランドアンカーが対策に使われました。
アンカーは単に棒を打つものではありません。先端の定着地盤、自由長、緊張力、防食、施工中の地下水、既設構造物との離れを設計します。施工後も荷重を受け続けるため、長期の計測と維持管理が前提です。
- 地下水位浮力を生む水圧の基礎となる観測値。
- 浮力構造物を下から押し上げる水圧による上向きの力。
- 定着地盤アンカーの力を地中へ伝える、十分な抵抗を持つ地盤。
- 緊張力アンカーに与え、構造物の浮上を抑える管理対象の力。
東京駅、上野地下駅、東京駅日本橋口で何が違ったのか
東京駅の総武・横須賀線地下ホーム
KTB協会の施工事例は、1972年建設の東京駅地下ホームで地下水位の上昇が続き、浮力による損傷が懸念されたことを記録しています。永久グランドアンカーでの対策区間は160m、施工本数は70本です。
上野地下駅
東京都は、上野地下駅で地下水位の上昇に対し、鉄製おもりを置く一次対策の後、アンカー対策が行われた経緯を紹介しています。同じ浮力でも、施工できる場所と既設構造物の条件で選択肢は変わります。
東京駅日本橋口の複合ビル
大林組は、東京駅日本橋口の複合ビルで、地下水による浮き上がりを考慮して永久鉛直アンカーを設置したと記録しています。新設の建物なら、基礎計画の段階から浮力を荷重条件に入れられます。
面白さは、地下水の回復が構造物の荷重条件を変えることにある
地下水位の回復は、水環境には望ましい変化になり得ます。しかし地下構造物には、設計時より大きな浮力を与える場合があります。都市の地下では、環境の改善と構造物の安全が別々に進みません。
東京都の資料は、地下水を下水へ流すだけでなく、立会川へ導水する取り組みにも触れています。地下水を単に排除するのでなく、地域の水循環と構造物の安全を同時に考える発想です。
発注前に、浮力対策の計算と監視をどう確かめるか
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 地下水観測 | 長期の水位変動、豪雨時、揚水規制後の変化を設計条件へ反映しているか。 |
| 浮力の照査 | 構造物重量、上載荷重、地下水圧、地震時をどの組合せで確認したか。 |
| アンカー設計 | 定着地盤、必要本数、緊張力、防食、施工順を既設図面と照合しているか。 |
| 施工時の影響 | 削孔が既設躯体、鉄道設備、埋設物、地下水の流れへ与える影響を確認する。 |
| 維持管理 | 水位、変位、アンカー力の観測点、判定値、異常時の連絡体制を決める。 |
浮力対策は、アンカー本数だけで評価できません。地下水の将来変動をどう置いたかが、計画の土台になります。
許可業種から候補をどう探すか
地下駅や大規模な地下構造物の対策は、土木全体を管理する体制を入口にします。アンカーや掘削の専門工程も切り分けて確認します。
- 土木一式工事地下構造物、鉄道近接、仮設を含む全体管理の候補です。土木一式工事の会社一覧
- とび・土工・コンクリート工事掘削、地盤、コンクリート、アンカー周辺の工程に近い業種です。とび・土工・コンクリート工事の会社一覧
- 水道施設工事導水や水道インフラの施設工事を伴う場合に候補を確認します。水道施設工事の会社一覧
許可と並行して、供用中の鉄道近接工事、永久アンカー、地下水計測の実績を確認してください。
参考にした技術資料
- 東京都環境局東京の地下水に関わる問題で、地下水位回復と上野・東京地下駅の浮上対策を確認しました。
- KTB協会東京駅地下水対策で、東京駅地下ホームの対策区間と永久グランドアンカー施工を確認しました。
- 大林組東京駅日本橋口の複合ビルで、永久鉛直アンカーの採用を確認しました。
地下駅の浮力対策でよくある質問
地下駅は本当に水で浮くのですか?
地下水による上向きの力が、構造物と上載土の重さを上回れば浮き上がりの危険があります。実際に浮く前から、変位や地下水位を計測して対策します。
地下水をくみ上げ続ければ解決しますか?
周辺の地盤沈下や水循環に影響するため、単純な揚水は解決策になりません。
アンカーを入れれば保守は不要ですか?
不要ではありません。地下水位、アンカーの緊張力、構造物の変位を継続して確認します。