Key points
この記事の要点
重機の調達は、購入価格とレンタル日額を比べるだけでは決まりません。自社保有には償却、維持修理、管理などの費用があり、リースには長期の支払約束、レンタルには利用日数と回送費があります。まず必要な機種と能力を決め、同じ使用期間・稼働日数・費用範囲で三案を比べます。
- 購入は、長期間にわたり高い稼働を見込め、保管・整備・運搬まで自社で管理できる場合に向く
- リースは、機種を指定して長期使用し、初期の資金流出を平準化したい場合に検討する
- レンタルは、短期・季節利用、機種変更、故障時の代替、現場ごとの調達を重視する場合に向く
三つの調達方法は、契約の性格が違う
| 方法 | 主な特徴 | 先に確認する条件 |
|---|---|---|
| 購入 | 自社資産として長く使い、売却時期も自社で決める | 取得資金、稼働率、整備人員、保管場所、中古売却 |
| リース | 利用者が選んだ物件をリース会社が取得し、比較的長期に使用する契約が一般的 | 中途解約、総支払額、保守、残価、満了時返却・再リース |
| レンタル | レンタル会社の保有機から選び、必要な期間だけ借りる | 日額・月額、最低保証、回送、補償、休車、在庫、代替機 |
「リース」「長期レンタル」などの名称だけで判断できません。中途解約、修理負担、損傷時の負担、返却条件、総支払額を契約書で確認します。
比較するのは、同じ期間の総保有・使用コスト
国土交通省は、建設機械損料を、建設業者が所有する建設機械の償却費、維持修理費、管理費などのライフサイクルコストを1時間または1日当たりで表した経費と説明しています。自社の投資判断でも、同じ考え方で費用範囲をそろえます。
| 購入に入れる費用 | リースに入れる費用 | レンタルに入れる費用 |
|---|---|---|
| 購入代、資金調達費用、税・保険、点検・修理、保管、運搬、管理、売却額控除 | リース料総額、保守・修理、保険の自己負担、保管、運搬、返却・再リース | 基本料、日額・月額、補償、回送、燃料、アタッチメント、休車・延長 |
燃料、オペレーター、日常点検など、どの案でも同じ額になる費用は比較から外せます。ただし、契約に含まれる範囲が違う場合は差額を戻します。故障で現場が止まる損失、代替機の手配、繁忙期に借りられないリスクも金額または条件として残します。
過去12か月の稼働実績から、必要日数を置く
- 機種・能力・アタッチメント別に、実際に稼働した日と現場を集計する。
- 現場間の回送日、待機日、整備日を分ける。
- 今後の受注見込みを、確定、確度高、未確定に分ける。
- 楽観・標準・慎重の三つの稼働日数で総コストを計算する。
- 故障時、受注減少時、別機種が必要になった時の出口を確認する。
年間の保有日数を稼働日数として扱わないことが重要です。現場に置いていても作業していない日、他工種待ちの日、修理日を分けると、購入後の稼働率を過大に見積もりにくくなります。
5年間の仮定例では、稼働日数で結論が変わる
同じ小型油圧ショベルを5年間使う仮定例です。金額は税抜とし、割引現在価値、消費税、燃料、オペレーター費は簡略化のため含めません。実際には自社の見積書で置き換えます。
- 購入:購入800万円+資金調達60万円+税・保険50万円+点検修理130万円+保管・運搬80万円-5年後売却200万円=総額920万円
- リース:月14万5,000円×60か月+点検修理130万円+保管・運搬80万円=総額1,080万円
- レンタル:1日3万2,000円×稼働日数+回送8万円×20現場
| 5年間の稼働日数 | 購入の1日当たり | リースの1日当たり | レンタル総額・1日当たり |
|---|---|---|---|
| 250日 | 3万6,800円 | 4万3,200円 | 960万円・3万8,400円 |
| 500日 | 1万8,400円 | 2万1,600円 | 1,760万円・3万5,200円 |
この前提では、レンタル総額が購入総額920万円と同じになるのは、5年間で約238稼働日です。計算は(920万円-回送160万円)÷3万2,000円です。ただし、稼働日数が同じでも、購入機の故障、保管場所、売却額、レンタルの長期割引や休車料が変われば分岐点も変わります。
リースが購入より安いとは限らず、購入より初期の現金流出を抑えられることと、総支払額が小さいことは別です。月額ではなく契約期間全体で比べます。
最安案より、資金と現場を止めない案を選ぶ
購入が総額で安くても、頭金や借入返済により運転資金が不足すれば、材料代や外注費の支払いへ影響します。反対に、レンタルの単価が高くても、受注が減ったときに返却でき、機種を現場ごとに変えられる価値があります。
次の条件が強い場合は、単純な1日当たりコスト以外を重く見ます。
- 災害対応や緊急工事で、すぐ使える自社機が必要。
- 特殊仕様やアタッチメントを常時使い、代替機が少ない。
- 現場の地域が広く、回送費が大きい。
- 排出ガス、ICT、安全装備など、必要仕様の更新が早い。
- 自社で整備記録と法定・メーカー点検を管理する人員が不足している。
全台を同じ方法でそろえる必要はありません。高稼働の基幹機は購入または長期調達し、繁忙期の不足分や特殊機はレンタルする組み合わせも比較します。
契約名だけで、経費処理を決めない
ファイナンス・リースは、一般的なレンタルと比べて長期で、中途解約できない契約が多く、修理や保守を利用者が負担する場合があります。満了時の返却、再リース、残価精算も契約ごとに確認します。
法人税上、一定のリース取引は賃借人が資産を取得したものとして扱われ、所有権移転外リース資産にはリース期間定額法などの取扱いがあります。「月々のリース料だから全額を同じ方法で経費処理できる」と一律には判断できません。
購入時の減価償却、固定資産税、補助金・税制措置、リースの会計・税務処理は、取得時期、法人規模、契約内容、適用する会計基準で異なります。契約前に見積書と契約案を税理士・公認会計士、金融機関へ示し、資金繰り表と決算への影響を確認します。
Before deciding
実行前の注意
- この記事の金額と損益分岐は比較方法を示す仮定例で、特定機種の相場ではありません。
- 契約条件、会計基準、税務、補助金、減価償却、資金調達の最終判断は、販売・リース・レンタル各社の正式見積と契約書をそろえ、税理士・公認会計士、金融機関等へ確認してください。
Checklist
実務で確認すること
- 必要な機種、能力、仕様、アタッチメントを先に固定する
- 過去12か月の稼働日、待機日、整備日、回送回数を集計する
- 3~5年など同じ比較期間で総支払額を出す
- 購入は維持修理・保管・管理を加え、予想売却額を控除する
- リースは中途解約、保守、満了・返却条件を確認する
- レンタルは回送、補償、休車、延長、繁忙期在庫を確認する
- 標準・慎重・楽観の稼働日数で損益分岐を計算する
- 設備資金を支払った後の運転資金残高を確認する
Primary sources
参考にした一次情報
- 国土交通省建設機械等損料
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21リース調達とは
- 公益社団法人リース事業協会リース契約の特徴とレンタル契約との違い
- 国税庁No.5704 所有権移転外リース取引