コンクリートは固まるとき、自分で熱くなる
ダムのコンクリートは、ただ大量に打てばよい材料ではありません。セメントと水が反応して固まるとき、内部では水和熱が生まれます。
小さな部材なら熱は逃げます。数m単位の厚さを持つダム堤体では、内部に熱がたまり、表面との温度差が大きくなります。温度が下がるときの収縮まで重なると、ひび割れの原因になります。
そこで現場は、材料を冷やし、打設後は内部の管にも水を通します。巨大な構造物を、時間をかけて落ち着かせる施工です。
なぜダムだけがここまで温度を気にするのか
ダムは多量のコンクリートを連続して積み上げます。内部の温度が上がっても、外気に触れる表面は先に冷えます。この差が大きいと、部材の中で伸び縮みの差が生まれます。
国土交通省の河川砂防技術基準は、打込み温度を下げて最高上昇温度を抑えるプレクーリングと、埋設した鋼管へ冷水を流して水和熱を吸収するパイプクーリングを示しています。
狙いは冷たくすることではありません。設計で想定した温度履歴へ近づけ、温度差と温度降下の速さを管理することです。
材料を冷やし、内部から熱を運び出す仕組みとは
ダムコンクリートの温度対策は、打つ前と打った後に分かれます。プレクーリングは、練混ぜ水、粗骨材、必要に応じてセメントなどを冷やし、打込み時点の温度を下げます。パイプクーリングは、コンクリート内へあらかじめ埋めた鋼管に水を通します。
パイプクーリングは、柱状工法で内部コンクリートに使われます。国土交通省の施工設備資料は、打込み直後の水和熱を取る一次冷却と、堤体を最終安定温度へ近づける二次冷却を区別しています。
- 打込み温度練り上がりから打設までに管理する、最初の温度条件。
- 最高温度水和熱で内部温度がどこまで上がるかを示す管理値。
- 温度勾配内部と表面、または部材内の温度差。大きいほどひび割れの要因になります。
- 養生急な乾燥や冷却を避け、温度と水分の条件を整える作業。
横瀬川、新桂沢、成瀬では何を管理したのか
横瀬川ダムの夏期打設
国土交通省四国地方整備局の報告は、横瀬川ダムで夏期の打込み温度を25℃未満とするため、夜間打設、セメントクーラー、骨材の日よけ、5〜7℃のチラー冷却水を使った練混ぜ水と粗骨材のプレクーリングを紹介しています。
新桂沢ダムの打設管理
鹿島建設は、新桂沢ダムで複数ブロックを昼夜に打設する施工を紹介しています。製造から運搬、打設、試験までをデータで共有し、打設位置に結び付けて管理しました。温度は材料だけでなく、滞留時間と運搬順でも変わります。
成瀬ダムの堤体コンクリート
鹿島建設は、成瀬ダムで低炭素型のECMコンクリート1,526m³を堤体などへ導入したと発表しました。温度管理とは別の課題ですが、大量のダムコンクリートでは配合、施工性、環境負荷を同時に扱う必要があります。
面白さは、熱を消すのでなく熱の履歴を設計する点にある
温度管理は、最高温度だけを下げる競争ではありません。急激で長期の冷却も、管の周りに大きな温度差をつくります。土木研究所の資料も、適切な期間の冷却は有効である一方、長期の急速冷却は好ましくないと整理しています。
いつ打つか、何時間で運ぶか、何層をどの間隔で積むか、いつ冷却を始めて止めるか。ダムは、材料と工程をまとめて温度の履歴に変える構造物です。
発注前に、温度ひび割れ対策をどう確認するか
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 温度応力の検討 | 配合、打設ブロック、打設間隔、外気条件を前提にした管理値を確認します。 |
| 材料の冷却 | 水、骨材、セメントのどれをどこまで冷やすかで設備と品質管理が変わります。 |
| 運搬と打設 | プラントから現場までの時間、打設順、打設速度が温度と打継ぎに影響します。 |
| 計測計画 | 温度計の位置、測定頻度、警戒値、異常時の対応を施工前に決めます。 |
| 養生と冷却停止 | 表面保温、散水、冷却水の停止時期まで含めて急な温度差を避けます。 |
提案書では冷却設備の有無だけを見ません。予測、実測、判断、記録の流れがつながっているかを確認します。
許可業種から候補をどう探すか
ダム本体を総合的に施工する会社は、まず土木一式工事で探します。コンクリート打設や仮設備の専門工程も、工事範囲に応じて確認します。
- 土木一式工事ダム堤体、基礎処理、仮設備を統合する工事の入口です。土木一式工事の会社一覧
- とび・土工・コンクリート工事掘削、基礎、コンクリート工程を担う候補を確認します。とび・土工・コンクリート工事の会社一覧
- 舗装工事ダム天端や管理用道路の舗装を分けて発注する場合に確認します。舗装工事の会社一覧
ダムの経験は、堤体形式、施工法、打設量、寒暑条件、温度計測の実績まで確認してください。
参考にした技術資料
- 国土交通省河川砂防技術基準 設計編 技術資料で、プレクーリングとパイプクーリングの位置付けを確認しました。
- 近畿地方整備局ダム施工機械設備で、一次・二次冷却と設備構成を確認しました。
- 四国地方整備局横瀬川ダム本体コンクリート打設の報告で、夏期の温度低減策を確認しました。
- 土木研究所コンクリートダムの温度応力に関する資料で、温度勾配と冷却期間の考え方を確認しました。
- 鹿島建設施工設備と成瀬ダムへのECMコンクリート導入を参照しました。
ダムコンクリートの温度管理でよくある質問
ダムのコンクリートは、冷やせば冷やすほど良いのですか?
良いとは限りません。急激で長い冷却は温度差を大きくし、別のひび割れ要因になります。打設計画と温度応力の検討に沿って管理します。
夏だけ温度管理が必要ですか?
夏は打込み温度が上がりやすい時期ですが、寒い時期にも内外の温度差や急な温度低下を管理します。
RCD工法ならパイプクーリングは使いませんか?
面状に敷き均すRCD工法では埋設管が施工の妨げになりやすく、プレクーリングが用いられます。