建設技術図鑑

液状化とその対策とは?地面が水っぽくなる前に、何を変えるのか

地震で砂地盤が強さを失う液状化。江東区新木場、仙台空港、千葉県市原市の対策事例から、締固め・注入・基礎をどう使い分けるかを解説します。

更新日
2026年7月11日
読了目安
11分
テーマ
地震・地盤改良・基礎
地震時に水圧が高まり砂地盤が変形する状態と、締固め・杭・注入で対策する断面図の仕様

地震で地面が水っぽくなると、建物の下で何が起きるのか

地震の後、道路が波打ち、マンホールが浮き、建物が傾く。液状化は地面が消える現象ではなく、砂と水の関係が急に変わる現象です。

水を含む緩い砂地盤が揺すられると、粒のかみ合わせが弱まり、水圧が高まります。地盤は建物を支える力を失い、沈下や横方向の移動が起きます。

対策は一つではありません。地盤を締める、水の流れを変える、砂を固める、基礎で荷重を受ける。対象と目的に合わせて選びます。

なぜ砂と水があるだけで、地盤の強さが変わるのか

砂粒の間には水があります。普段は砂粒同士が押し合い、建物の重さを地盤全体で受けます。

強い揺れで砂粒が並び替わると、隙間の水が逃げにくくなります。水圧が上がると砂粒が押し合う力が減り、地盤は一時的に変形しやすくなります。

地下水位が高く、細かい砂が緩く堆積する場所では、調査と判定が特に重要です。埋立地だけを単純に危険と決めつけることも、地図だけで安全と決めることもできません。

液状化対策では、地盤のどこを変えるのか

液状化は、地震時に飽和した砂質地盤の有効応力が低下し、強さと剛性が小さくなる現象です。定義はこの一度だけです。

対策は、砂粒を締め固めて密度を上げる方法、薬液などを浸透させて固結する方法、地下水位や排水条件を変える方法、基礎や構造物で変形を許容・抑制する方法に分けて考えます。

  • 締固め砂の密度を上げ、揺れで粒が動きにくい状態にします。
  • 浸透注入薬液を砂の間隙へ浸透させ、地盤を固めます。
  • 排水揺れで上がる水圧を逃がす考え方です。
  • 基礎対策建物の沈下や傾斜を抑えるため、杭や基礎形式を検討します。

対策の目的は、地盤そのものを完全に動かなくすることだけではありません。空港、タンク、住宅、道路では、守りたい性能が違います。

新木場・仙台空港・市原市で、何を守ったのか

東京都江東区新木場の食品加工施設

大成建設の技術センター報は、厚い軟弱層がある新木場の食品加工施設で、液状化対策を併用したパイルド・ラフト基礎を採用した例を報告しています。隣接建物に配慮し、静的締固め砂杭工法を選びました。

2011年の地震では周辺で液状化が起きた一方、資料は対策部で鉛直・水平とも2mm以下の変位に抑えたと報告しています。

仙台空港

同資料は、仙台空港で2008年度以降に耐震化工事を進め、東北地方太平洋沖地震時に滑走路での液状化発生を抑え、支援物資の輸送に早期対応できた事例を紹介しています。

千葉県市原市の貯油タンク

同じ技術資料では、既設の1,100kLタンクを対象に浸透注入固化を施した例も示されています。供用中の設備に近い対策では、施工時に設備を止めないことと、周辺への影響を抑えることが同時の課題になります。

面白さは、地面を強くするだけが答えではないこと

液状化対策は、地盤を硬くする工事というイメージが先に立ちます。実際には、揺れで生じる水圧をどう逃がすか、基礎でどこまで変形を許すかも同じくらい重要です。

新築なら地盤改良と基礎を一体で設計できます。既存施設なら、止められない設備、近接建物、施工時の騒音までが条件になります。

同じ地震でも、地表の変形と建物の被害が同じ形で出るとは限りません。地盤、基礎、建物、配管を別々にせず、復旧の順番まで考える必要があります。

地盤改良の範囲を広げれば安心とは限りません。周辺地盤への影響、工費、工期を比較し、守る性能に見合う範囲を決めます。

地面は建物の外側にあるようで、建物の性能を決める構造の一部です。

発注前に、液状化対策の比較表で何を見るか

最初に決めるのは、液状化をゼロにするという抽象的な目標ではありません。人命に関わる設備を守るのか、建物の継続使用を優先するのか、外構や配管まで復旧を早めるのかを分けます。

工法を比べる時は、改良後の計算値だけでなく施工時の影響を並べます。既存住宅や工場の近くでは、振動、騒音、地盤の押し出し、地下水の変化が選定条件になります。

調査結果、設計条件、施工記録、施工後の確認結果をつなげて保管すると、将来の改修や売買時にも地盤対策の根拠を説明しやすくなります。

確認項目確認する理由聞く内容
地盤調査砂層、水位、N値でリスクが変わります。調査深度、地下水位、液状化判定の条件。
守る対象建物、外構、配管、道路で目標が違います。沈下、傾斜、側方流動の許容範囲。
工法比較締固め・注入・排水では施工影響が異なります。施工深度、振動、騒音、近接影響。
既存施設への影響供用を止められない場合があります。施工時間、変位計測、設備保護。
施工後の確認改良の品質を確かめる必要があります。改良体、N値、地下水、記録の確認方法。

許可業種から候補をどう探すか

液状化対策は、地盤改良だけで完結しない場合があります。造成、基礎、道路、建物のどこを守るかに応じて候補を探します。

許可業種は候補整理の入口です。地盤条件が近い実績と、施工後の確認方法まで説明できるかを見てください。

参考にした技術資料

よくある質問

液状化マップで危険なら、必ず対策が必要ですか?

地図は広域の傾向を知る入口です。敷地ごとの地層、地下水位、建物用途を調べて判断します。

杭があれば液状化は気にしなくてよいですか?

杭だけで全ての影響を防げるとは限りません。側方流動や配管・外構も確認します。

既存建物でも対策できますか?

条件によって可能です。近接建物と設備への影響も含めて検討します。