交通を止めずに、道路の下へ管を通すにはどうするか
道路を長く掘り返せば、下水管は入れられます。しかし幹線道路、鉄道、河川、住宅密集地では、開削できる場所も時間も限られます。
そこで、発進立坑から掘進機を進め、後ろから管を押し込むのが推進工法です。地表を長く開けずに、地下へ管路を築きます。
小さな立坑の中で、地盤、地下水、推進力、方向を読み続ける。見えない場所での精度管理が、道路を守る工法です。
なぜ開削せずに管を通す必要があるのか
開削工法は浅い管路では合理的です。ただし、交通量の多い道路を長期規制し、既設のガス、水道、電力、通信と交差する場合、影響が大きくなります。
推進工法なら、発進と到達の立坑へ工事を集約できます。地表への影響を短くできる一方、地中の状態は見えません。地盤の取り違え、地下水の異常出水、掘進方向のずれは、道路陥没や到達不能につながります。
非開削は、地上を掘らないことではなく、地中をより慎重に把握する施工です。
掘進機と管は、地中でどう前へ進むのか
推進工法は、発進立坑に置いたジャッキで掘進機と推進管を地中へ押し出し、到達立坑まで管路を築く工法です。ここでの定義はこれだけです。
前方の掘進機が土を掘り、土砂は管内や泥水の循環で立坑側へ送ります。掘進が進むたび、後ろに次の管をつなぎ、ジャッキで押します。長い距離では中押し装置を使い、管にかかる力を分散させます。
- 発進立坑・到達立坑掘進機を送り出し、受け取るための作業空間。
- 掘進機地盤を掘り、土砂と地下水を管理しながら進む機械。
- 推進管後方から押し込む、完成した管路となる管。
- 裏込注入管と地山のすき間を充填し、地盤の緩みや沈下を抑える作業。
長距離、高水圧、巨石地盤で何が試されたのか
1スパン1,265.03mの超長距離推進
機動建設工業の施工報告は、二重管推進工法による1スパン1,265.03mの超長距離施工を扱っています。長距離では、推進力の上昇、管の安全、滑材、測量精度を一つの工程として管理します。
高水圧下の既設シールドからの発進
日本非開削技術協会の2023年度発表には、機動建設工業による高水圧下で既設シールドトンネルから発進する推進工法の施工報告があります。新設管だけを見るのでなく、既設構造物との接続部を安全に扱う課題です。
巨石と粘土が混在する地盤
同協会の2022年度発表には、アルファシビルエンジニアリングによる巨石と粘土が混在する地山での泥水式推進工法の事例があります。土質が変わる地盤では、掘進機の選定以前に、ボーリングと既往資料で障害を把握する必要があります。
面白さは、管を押す力と地盤を支える力を同時に調整することにある
推進工法は、管を強く押せば速く進む単純な仕事ではありません。推進力が上がり過ぎれば管や継手へ負担がかかります。切羽の圧力が不足すれば地盤が緩み、過大なら地表を持ち上げる恐れがあります。
掘削土の量、泥水の性状、ジャッキ圧、測量値、地表の変位を同じ画面で読みます。長い道路を掘り返さない代わりに、地中で起こる小さな変化を見逃さない工法です。
発注前に、地盤調査と立坑計画をどう確認するか
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 地盤調査 | 土質、玉石、岩盤、地下水位、透水性を管路の深さと線形に沿って把握する。 |
| 既設埋設物 | 管路、杭、地下構造物の位置を図面と探査で確認し、掘進余裕を照査する。 |
| 立坑 | 用地、山留め、地下水、クレーン、残土搬出、交通規制を発進・到達の両方で確認する。 |
| 工法選定 | 管径、延長、曲線、土質、水圧に対する適用範囲と、選定理由を資料で確認する。 |
| 計測と異常時 | 方向管理、推進力、排土量、地表変位の管理値と、停止判断を事前に決める。 |
国土交通省の標準歩掛にも、刃口、泥水、泥濃式ごとの仮設備、裏込め、坑口、中押し装置が整理されています。見積りは管を押す作業だけで比較しません。
許可業種から候補をどう探すか
公道下の下水道管路を築く工事は、土木一式工事を入口にします。立坑、掘削、地盤、上下水道施設を含む範囲で候補を広げます。
- 土木一式工事道路下の管路、立坑、周辺仮設を総合的に施工する候補です。土木一式工事の会社一覧
- とび・土工・コンクリート工事立坑掘削、山留め、土工に近い業種です。とび・土工・コンクリート工事の会社一覧
- 水道施設工事上水道施設や配水管を含む工事では、こちらも確認します。水道施設工事の会社一覧
推進工法の実績は、管径だけでなく土質、地下水、延長、曲線、既設構造物との近接条件までそろえて見ます。
参考にした技術資料
- 国土交通省循環のみち下水道賞の資料で、推進工法が下水道管きょ整備で発展してきたことを確認しました。
- 国土交通省下水道用設計標準歩掛表の改定で、推進工法の工程と仮設備の区分を確認しました。
- 日本非開削技術協会二重管推進工法による超長距離推進の施工事例を参照しました。
- 日本非開削技術協会非開削技術研究発表会で、高水圧下と巨石混在地盤の施工報告を確認しました。
- 全国地質調査業協会連合会地質リスクを回避した事例で、下水道推進工法における地質判断のリスクを確認しました。
推進工法でよくある質問
推進工法なら道路を一切掘り返しませんか?
発進側と到達側には立坑が必要です。道路を長く開削しない利点はありますが、立坑の位置、交通規制、資材搬入、泥水や掘削土の処理は計画します。
推進工法はどんな土でも使えますか?
工法ごとに適用できる土質、地下水圧、管径、延長、曲線半径が異なります。
管工事の許可を持つ会社に下水管を頼めますか?
公道下の下水道管路を総合的に施工する工事は、一般に土木一式工事の文脈で確認します。