建設技術図鑑

タワークレーンはどうやって昇り、どうやって降りるのか

高層建築のタワークレーンは、建物の成長に合わせて自ら高さを変えます。クライミングと解体の順序、東京スカイツリーなどの事例、発注前の確認点を整理します。

更新日
2026年7月11日
読了目安
11分
テーマ
高層建築・揚重計画
高層建築の中央でタワークレーンがマストを継ぎ足し、完成後は逆順に縮む工程を示す断面図仕様

ビルより高いクレーンは、誰が持ち上げたのか

高層ビルを見上げると、建物より先にクレーンの先端が空へ届いています。

不思議なのは、建物が伸びるたびにクレーンも高くなる点です。完成時には、その巨大な機械が跡形もなく消えます。

答えは、建物を足場にして高さを変える段取りにあります。昇る工程と降りる工程は、建築の計画そのものです。

なぜ地上のクレーンだけでは届かないのか

地上に置く移動式クレーンは、吊る荷が遠くなるほど能力が下がります。超高層では、道路や隣地も大きな作業半径を許しません。

タワークレーンは建物の近くに立ち、材料を高く、繰り返し運びます。鉄骨、鉄筋、型枠、設備機器を工程に合わせて上げます。

ただし、高さだけを追えばよいわけではありません。荷の重さ、吊る距離、風、建物との接続、解体の出口まで先に決めます。

クライミングでは、何を継ぎ足して上がるのか

クライミングとは、タワークレーンが建物の進行に合わせて高さを上げる作業です。定義はこれで十分です。

マストクライミングでは、支柱となるマストを上へ継ぎ足します。鹿島建設は、吊り上げたマスト部材を上部へ接続する仕組みを公開しています。

フロアクライミングでは、クレーンを建物の床や支持部に固定し、油圧装置で本体を一段ずつ引き上げます。大林組は、鉄骨造の超高層でこの方式を通常採用すると説明します。

  • マストクレーンの支柱です。継ぎ足す本数と支持条件を工程ごとに管理します。
  • 支持部建物側でクレーンを受ける部位です。躯体の強度と施工段階を確認します。
  • アンカー・控え風や荷重で塔体が動かないよう、建物と結ぶ仮設部材です。
  • 逆クライミング完成後にマストや支持を外しながら、クレーンを低くする作業です。

最後に難しくなるのは解体です。上に残った機械で自分を丸ごと降ろせないため、順番に小さくしていきます。

どの現場で昇降の段取りが問われたのか

東京スカイツリー

大林組は、東京スカイツリーで4基のタワークレーンを使った解体工程を公開しています。建て方用の2基は、塔体の建設とともにマストクライミングを行いました。

この2基は荷揚げ用の2基より高い位置にありました。そこで先にマストを外して高さを下げ、クレーン同士で解体できる位置へ戻しました。

浜松医療センター新病院整備工事

清水建設は工事かわら版で、タワークレーン「家康号」が上部へせり上がる予定を伝えています。病院のように工程と安全動線が密な現場では、昇る日も施工計画の一部です。

クライミング中は、通常の揚重を止める時間が生まれます。建築、設備、搬入の作業を前後へどう振り分けるかが、現場全体の生産性を左右します。

大型陸上風車の建設

清水建設など3社は、風車用の移動式タワークレーンを開発しました。建設後はクライミングダウンを行い、架台の脚部を外して多軸台車へ載せます。

建物の内部に残る高層クレーンとは違い、次の風車地点へ移す計画が要です。同じ下降でも、搬出方法が変わると仮設の考え方も変わります。

面白さは、最後の一台をどう消すかにある

クレーンは材料を上げるための機械ですが、完成に近づくほど自分を降ろす対象になります。

大きな機械で大きな機械を外し、次に小さな機械を使います。最後は屋上の小型デリックなどで部材を分け、エレベーターや開口部から搬出します。

高層建築では、完成形の図面だけでは足りません。建設中の各階がどこまで荷重を受け、何が残るかを時間軸で描く必要があります。

発注前に揚重計画の何を確認するか

確認項目確認する理由
最大荷重と作業半径最も重い部材を、実際に吊る距離で扱えるかを確認するため。
支持部の設計建物側の躯体が施工時の反力と風荷重を受けるため。
強風時の運用風速の基準、退避、旋回、再開判断を事前に決めるため。
近隣と上空の条件道路、鉄道、隣接地、送電線、航空法の制約が作業範囲を変えるため。
昇降・解体の工程クライミング日に止まる作業と、最後の搬出方法を確認するため。
合図と立入管理玉掛け、荷の下、旋回範囲の事故を防ぐため。

許可だけで高層の揚重経験は読めません。類似高さ、最大部材、都市部の近隣条件を、実績資料で確認します。

許可業種から候補をどう探すか

タワークレーンの計画は、建物全体を担う会社と専門工事会社が組んで進めます。許可情報では、まず工事の中心に近い業種から候補を広げます。

参考にした技術資料

よくある質問に答えます

クレーンは自分の重さをどう支えますか?

建物側の支持部や基礎、マスト、控えを計画し、施工段階ごとに荷重と風の条件を確認します。機械だけで自立するのではなく、建物と仮設計画が一体で支えます。

完成後にクレーンを外す方法はありますか?

大きなクレーンを逆クライミングで下げ、残る小型機で部材を降ろします。最後の小型機は、屋上のデリックなど別の揚重設備で分解して地上へ搬出します。

発注者は機種名まで決める必要がありますか?

通常は施工者が計画します。発注者は、揚重計画、風対策、近隣への影響、解体までの工程が説明されているかを確認します。