建設技術図鑑

沈埋トンネル: 海の底にトンネルを「沈めて」つなぐ

海底にコンクリートの函を沈めてつなぐ沈埋トンネル。製作、進水、曳航、沈設、接合の流れを、東京港海の森トンネルや夢咲トンネルの事例で解説します。

更新日
2026年7月11日
読了目安
12分
テーマ
港湾・海底トンネル
製作ヤードから沈埋函を進水し、海上を曳航して海底の溝へ沈設・接合する工程図仕様

海の底に、完成品のトンネルを沈める

海底トンネルと聞くと、海の下を掘り進む巨大な機械を想像しがちです。

沈埋トンネルは違います。陸上で大きな箱形の構造物を造り、浮かべて運び、海底に沈めてつなぎます。

海で造るのに、精度の勝負は陸上の製作から始まります。

なぜ海底を掘り続けず、函を沈めるのか

港の航路や海峡では、橋が船舶の高さを妨げる場合があります。海底を通せば、上空を使わずに道路や鉄道をつなげます。

一方で海中の掘削は、止水、土圧、水圧、船舶航行を同時に扱います。沈埋では、構造体の多くを乾いた製作ヤードで造れます。

現地での作業を短くできる利点がある反面、函体を沈める一回の工程に高い準備精度が要ります。

沈設から接合まで、海底で何をするのか

沈埋トンネルは、鉄筋コンクリートなどで造った沈埋函を海底へ沈設し、隣の函と接続してつくるトンネルです。定義はここまでです。

まず海底を浚渫し、函体が入る溝を造ります。製作ヤードで函体を完成させ、止水扉で両端を閉じて進水させます。

タグボートなどで現地まで曳航し、測量と係留設備で位置を合わせます。函体へ注水してゆっくり沈め、既設函の端部へ接続します。

接合後に継手の止水を確認し、函体の下へ基礎材を充填します。最後に周囲を埋め戻し、海底の安定と航路を回復します。

  • 沈埋函陸上で造る箱形のトンネル本体です。
  • 浚渫溝函体を置くため海底に掘る溝です。
  • 曳航浮かべた函体を海上で施工地点まで運ぶ作業です。
  • 最終接合最後の函体をつなぎ、全区間を通す重要な工程です。

どの港で沈埋函が海底をつないだのか

東京港海の森トンネル

国土交通省の技術資料は、東京港海の森トンネルの沈埋区間を931mと示しています。海の森地区と中央防波堤地区を結び、臨海部の物流・交通を支える計画です。

資料は、同規模の沈埋トンネルと比較し、施工場所の浚渫、函体の沈設、基礎処理を工程として整理しています。水上施工と港湾利用の調整が前提になります。

大阪港夢咲トンネル

近畿地方整備局大阪港湾・空港整備事務所は、咲洲と夢洲を結ぶ道路・鉄道併用の海底トンネルとして夢咲トンネルを案内しています。

国土交通省資料は、沈埋区間長を806mと記載します。港湾活動を止めずに、島と島を海底でつなぐ役割が沈埋の適性を示します。

小断面沈埋のプレキャスト・セグメント工法

大林組は、専用ヤードで沈埋函セグメントを製作し、PC鋼材で一体化してから、マリンリフトで進水・曳航・沈設する方式を公開しています。

同社は新交通海底トンネル、海底共同溝、物流トンネルへの適用を挙げます。大断面だけの特殊工法ではなく、目的に応じて断面を変える余地があります。

面白さは、浮く重い構造物を数センチで合わせる点にある

沈埋函は非常に重い構造物ですが、進水時には浮力を使って海へ出ます。沈設時には注水で重さを増し、浮力と重力を細かく釣り合わせます。

海底では見通しが利きません。測量、係留、潮流予測、連絡体制を重ね、既設函へ近づけます。

つなぐ瞬間に必要なのは力任せの施工ではありません。海の動きを読み、位置と時間をそろえる技術です。

海の条件は、施工日をどう変えるのか

沈設は、予定日に必ず実施する作業ではありません。潮流、波、風が計画条件に収まる時間を選びます。

施工者は海象予報だけに頼りません。現地の観測、作業船の位置、港湾内の航行情報を集め、実施か延期かを判断します。

延期は損失ではありません。無理に沈めて接合精度を失う方が、工程にも品質にも大きく響きます。

発注者は、予備日と待機費用の考え方を確認します。海上の仮設は、天候の余裕を織り込んだ計画で初めて安定します。

沈設の前には、函体の姿勢、バラスト水、係留索、測量機器を再確認します。一つの確認漏れが、海底での修正を難しくします。

接合できない場合の退避手順も要ります。引き返せる条件と、待機する位置を計画書へ明記します。

発注前に海上施工の何を確認するか

確認項目確認する理由
海象条件潮流、波、風が曳航・沈設の可否を直接左右するため。
海底地盤浚渫、支持、基礎処理、沈下予測の前提になるため。
函体の製作精度接合部の止水と位置精度を左右するため。
航路・漁業調整港湾利用者と作業船の安全を両立するため。
沈設計測位置、姿勢、沈下量を見ながら接合するため。
維持管理漏水、変位、函体周辺の洗掘を供用後も確認するため。

技術提案では、沈設当日の作業だけでなく、延期時の判断、係留、航行安全、止水確認までを読みます。

許可業種から候補をどう探すか

沈埋トンネルは港湾土木、海上施工、コンクリート構造、計測を統合する工事です。工法名だけでなく、海上の実績と施工体制を確認します。

参考にした技術資料

よくある質問に答えます

海水はトンネルへ入らないのですか?

函体の継手には止水の仕組みを設け、接合後は漏水を確認します。海底の地盤、接合精度、維持管理まで含めて止水性能を確保します。

海が荒れた日も沈められますか?

海象が計画条件を外れる日は作業を進めません。曳航、位置決め、沈設は潮流、波、風、船舶航行を見ながら実施します。

シールドトンネルと何が違いますか?

シールドは地中を掘り進みます。沈埋は陸上や製作ヤードで造った函体を海底の溝へ沈め、順に接続します。