建設業法・許可・行政処分事例から確認

建設業許可が必要な工事を無許可受注 行政処分3例と発注前チェック

建設業許可が必要な規模の工事を無許可で請け負った2例と、無許可業者へ発注した元請の処分例を検証。500万円基準と契約前の確認事項を整理します。

公開日
2026年7月22日
読了目安
約12分
対象
建設会社の経営者、元請の契約担当者、工事の発注者
工事前の住宅に車両と資材を配置した改修現場のイメージ

許可を持たない事業者が工事を請け負っても、軽微な建設工事に当たれば直ちに建設業法違反とはなりません。しかし、建築一式工事以外で請負代金が500万円以上になるなど、許可が必要な規模・業種の工事を無許可で請け負うと違反になります。建設業者である元請が、そのような業者と基準額以上の下請契約を結んだ場合も行政処分の対象になり得ます。契約前に金額、業種、許可番号を一組で確認することが結論です。

Quick Summary

この記事の要点

  • 原則建築一式以外は500万円未満、建築一式は1,500万円未満などが軽微な工事の基準
  • 処分例無許可受注のほか、無許可業者へ基準額以上を発注した元請の行政処分もある
  • 契約前税込総額、支給材料、分割契約、許可業種、一般・特定の区分まで照合する

建設業法・許可

許可がないだけで直ちに違法とは限らない

建設業法は、建設工事を請け負って営業する者に建設業許可を求めています。ただし、国土交通省が示す「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可がなくても営業できます。

工事の区分軽微な建設工事の基準
建築一式工事1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
建築一式以外1件の請負代金が500万円未満

金額には消費税と地方消費税を含みます。建築一式工事は、複数の専門工事を組み合わせて建築物を総合的に完成させる工事です。部分的なリフォームや専門工事が、住宅に関する工事というだけで一律に建築一式になるわけではありません。

したがって、「許可検索で見つからない会社」と「無許可営業の違反会社」は同じ意味ではありません。工事内容と契約額を確認せず、会社名だけで違法と判断することはできません。以下の会社名と内容は処分当時の公表事実であり、現在の許可・営業状況を示すものではありません。

建設業法・許可

事例1 東京都内の公共工事で許可通知書の写しを偽造

東京都は2024年1月12日、株式会社MTテックに対し、同年1月29日から2月1日まで4日間の営業停止処分を公表しました。公表時点の許可番号欄は「許可なし」です。

東京都の公表によると、同社は東京都内の公共工事で、建設業許可通知書の写しを偽造して元請へ提出し、許可業者だと誤認させ、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負いました。元請は、有印公文書偽造・同行使の疑いで所轄の警察署へ告訴状を提出したとされています。

ここで確認できるのは行政処分と告訴状提出の事実です。刑事事件の有罪判決までを示す資料ではないため、記事では「逮捕」「有罪」とは扱いません。実務上の教訓は、提出された写しだけでなく、許可行政庁の公開情報と照合することです。

建設業法・許可

事例2 無許可で基準額以上の解体工事を請負

鹿児島県は2024年4月24日、だるま商会に対し、同年5月11日から13日まで3日間、民間の解体工事に関する営業停止処分を行いました。国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでは、この処分記録の許可番号欄は「なし」と表示されています。

処分理由は、建設業許可を受けずに、軽微な建設工事の範囲を超える民間の解体工事を請け負ったことです。代表者には、建設業法に基づく営業禁止命令も出されています。

解体工事は、金額が500万円未満であれば何の登録も不要という意味ではありません。建設業許可が不要な規模でも、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律に基づく解体工事業登録が別に必要となる場合があります。許可と登録を混同しない確認が必要です。

建設業法・許可

事例3 無許可業者へ発注した元請側も処分

埼玉県は2025年2月17日、誠和建設株式会社に対し、同年3月4日から10日まで7日間の営業停止処分を公表しました。同社は一般建設業の許可を受けていましたが、民間工事で二つの問題が認定されています。

一つは、特定建設業の許可がないまま法定額以上の下請契約を結んだこと。もう一つは、必要な建設業許可を受けていない業者と、軽微な工事の範囲を超える下請契約を締結したことです。

この事例は、無許可で受注した側だけの問題ではないことを示します。元請は、下請の許可番号が存在するかだけでなく、発注する工事の業種をその許可がカバーしているか、下請総額に応じて自社に特定建設業許可が必要かまで確認します。

建設業法・許可

単発ではない 島根県では5年間に文書指導15件

国土交通省中国地方整備局が公開する島根県の講習資料は、令和2年度から令和6年度までの文書指導の内訳として、「500万円以上の工事を無許可で施工」を15件示しています。

これは全国件数ではなく、島根県の資料に掲載された5年度分の集計です。それでも、無許可で基準額以上を請け負う違反が、特殊な一社だけの出来事ではないことは分かります。

同資料には、地方公共団体から受注した工事で、必要な専門工事の許可を持たない業者と500万円以上の下請契約を結んだ例も掲載されています。公共工事だから取引先確認が不要になるわけではありません。

建設業法・許可

500万円の判定は見積書の末尾だけを見ない

軽微な建設工事に当たるかは、実質的な1件の工事全体で判断します。国土交通省の手引きと建設業法施行令では、次の金額を考慮します。

  • 消費税消費税・地方消費税を含む請負契約の総額で判断する。
  • 分割契約同じ工事の完成を複数契約に分けた場合は、正当な理由がある場合を除き合計する。
  • 支給材料注文者が材料を提供する場合は、市場価格または市場価格と運送賃を請負代金へ加える。
  • 単価契約1件の工事に係る全体金額で判定する。

例えば、工事代金が税込495万円でも、発注者支給の材料が30万円相当なら、判定額は500万円以上になり得ます。契約書を二つに分けただけで自動的に軽微な工事へ変わるわけでもありません。

建設業法・許可

500万円と5,000万円は別の基準

建築一式以外の500万円は、工事を請け負う会社に建設業許可が必要かを判断する基準です。一方、発注者から直接工事を請け負った元請が、下請へ出す総額が5,000万円以上になる場合は、原則として特定建設業の許可が必要です。建築一式では8,000万円以上です。

後者の基準は2025年2月1日に引き上げられました。自社が直接施工する部分が多く、下請契約の総額が基準未満なら、元請工事の請負額が大きくても一般建設業許可で対応できる場合があります。

二つの基準では支給材料の扱いも異なります。500万円・1,500万円の軽微な工事の判定では注文者支給材料を加算しますが、特定建設業の5,000万円・8,000万円の判定では、元請が提供する材料等の価格を下請契約総額へ含めません。

「500万円を超えたから特定許可」「5,000万円未満だから無許可でもよい」という理解はいずれも誤りです。受注者自身の許可要否と、元請の一般・特定区分を分けて確認します。

建設業法・許可

契約前に確認する7項目

  1. 工事全体の税込請負額、支給材料の市場価格、運送費を集計する。
  2. 分割見積や追加工事が、実質的に同じ1件の工事ではないか確認する。
  3. 国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで商号と許可番号を照合する。
  4. 許可の有効期間を確認し、表示上の期限を過ぎている場合は更新申請中か許可行政庁へ照会する。
  5. 発注する工事が、許可を受けた29業種のどれに当たるか確認する。
  6. 元請は下請契約の総額を集計し、一般・特定建設業の区分を確認する。
  7. 検索結果、許可通知、契約額の判定資料を契約記録と一緒に保存する。

会社名の表記ゆれや更新時差で検索できないこともあるため、検索結果がないだけで違反と断定しません。本人へ許可通知書の原本・最新情報を確認し、不明なら許可行政庁へ照会します。

建設業法・許可

無許可の疑いがあるときの対応

契約前なら、契約手続きをいったん保留し、工事区分、判定額、許可業種を整理して相手へ確認します。必要な許可を確認できないまま、軽微な工事の範囲を超える契約を結ぶことは避けます。

契約後に判明した場合は、追加発注を止め、契約書、見積書、請求書、支給材料、工事範囲、相手との連絡記録を保全します。無許可が判明しただけで契約を当然に無効・解除できるとは限りません。契約解除や代替施工の判断は、所管行政庁、弁護士、行政書士などへ個別に相談します。

国土交通省の「駆け込みホットライン」は、無許可で軽微な工事の範囲を超えた営業や、無許可業者との基準額以上の下請契約を通報対象として案内しています。事実と推測を分け、契約額と工事内容が分かる資料を基に相談します。

建設業法・許可

よくある勘違い

許可検索に出ない会社へは発注できませんか?

軽微な建設工事だけなら許可を要しない場合があります。商号変更、更新申請中、検索時差も確認し、工事内容と判定額で判断します。

一般の発注者も建設業法違反になりますか?

この記事の処分例で発注側の責任が問題になったのは、下請契約を結んだ建設業者である元請です。一般の施主と元請では法的立場が異なります。ただし、必要な許可を確認できない事業者へ発注することには、工事品質や契約履行上のリスクがあります。

元請が許可業者なら下請は無許可でもよいですか?

いいえ。下請が軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負う場合、その業種の許可が必要です。

行政処分を受けた会社は現在も違反状態ですか?

この記事は処分時点の公表事実を扱います。現在の許可・営業状況を示すものではなく、取引時には最新情報を確認します。

建設業法・許可

ファクトチェックに使用した一次資料

制度の適用は契約、発注機関、工事条件、申請時点で異なります。この記事は公表資料をもとにした一般的な実務整理です。個別案件は所管行政庁、発注機関、労働基準監督署、制度事務局または専門家へ確認してください。