安全衛生・7月は重点取組期間

熱中症対策は義務化済み 建設現場が7月に再点検する報告体制と対応手順

2025年6月施行の職場の熱中症対策について、対象となる暑熱作業、報告体制、対応手順、元請・下請の役割と2026年7月の点検事項を整理します。

公開日
2026年7月11日
読了目安
約11分
対象
現場代理人、安全衛生担当者、元請・下請事業者
WBGT計と休憩所を確認する建設現場の熱中症対策

2025年6月に施行された熱中症対策は、飲料や空調服を用意するだけの制度ではありません。一定の暑熱作業では、異常を早く把握する報告体制と、重篤化を防ぐ対応手順を作り、作業者へ周知する必要があります。

Quick Summary

この記事の要点

  • 対象作業WBGT28度以上または気温31度以上で、連続1時間以上または1日4時間超が見込まれる作業
  • 義務報告体制と対応手順を整備し、関係作業者へ周知する
  • 今月2026年7月はクールワークキャンペーンの重点取組期間

安全衛生

何が義務化されたのかを最初に整理

2025年6月の改正で、暑い場所での作業に関する対策がすべて新しく義務になったわけではありません。新たに明確な法的義務となった中心は、熱中症のおそれがある人を早く見つけて報告する体制と、見つけた後に重症化させない対応手順です。

水分・塩分の用意、休憩場所、暑さへの順化、服装、WBGTの把握などは重要な予防策です。これらの予防策と、規則で定められた報告体制・対応手順を組み合わせて現場を運用します。

区分内容
予防するWBGTを把握し、作業時間、休憩、水分・塩分、服装、暑熱順化などを調整する
早く見つける本人の申告、周囲からの報告、巡視、バディ制などで異常を把握する
悪化を防ぐ作業から離脱させ、身体を冷やし、必要に応じて医療機関へつなぐ

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義務の対象となる作業条件

対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、連続して1時間以上、または1日当たり4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。

これは発症してから適用を考える基準ではなく、作業計画の段階で対象になるかを判断する条件です。天気予報だけでなく、実際の作業場所での暑さ、照り返し、風通し、保護具の着用も踏まえます。

WBGTは気温だけでなく、湿度、日射・輻射熱、風の影響を含めて暑熱リスクを見る指標です。同じ気温でも、湿度が高い場所、直射日光を受ける屋上、風が通らない室内では身体への負担が変わります。測定器は作業者のいる高さや場所に近づけ、休憩所の数値だけで現場全体を判断しないことが重要です。

基準未満でも熱中症が疑われる症状が出た場合は、数値や作業時間にかかわらず直ちに対応します。

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異常を見つけたときの対応を5段階で決める

対応手順は、現場名だけを変えた書類を置くだけでは不十分です。誰が、どの順番で、どこへ連絡するかまで具体化します。

  1. 異常を把握する:本人の申告だけでなく、ふらつき、返事がおかしい、大量の発汗または汗が出ないなど、周囲が気付いた場合も報告します。
  2. 作業から離脱させる:日陰や冷房のある場所へ移し、保護具や衣服を緩めます。一人にせず、状態を見守ります。
  3. 身体を冷却する:首、脇、脚の付け根などを冷やします。自力で水分を取れない人へ無理に飲ませません。
  4. 医療につなぐ:意識状態が悪い、自力で水分を取れない、処置しても回復しない場合など、手順に従って救急要請や医療機関への搬送を行います。
  5. 関係者へ連絡する:現場責任者、所属会社、元請などへ状況を共有し、その後の作業継続や再発防止を判断します。

救急要請時に迷わないよう、現場住所、入口、誘導担当者、救急車の進入経路、近隣医療機関を手順書へ記載します。

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混在現場では元請だけに任せない

厚生労働省の施行通達は、建設現場のように複数の事業者が混在して作業する場合、元方事業者と、対象作業に労働者を従事させる関係請負人の双方が措置義務を負うとしています。

元請が現場共通の緊急連絡網や搬送先を整備していても、下請事業者は自社の作業者へ周知し、体調確認や報告を確実に行う必要があります。逆に各社が別々の手順を持つだけでは、現場全体の連携が遅れるおそれがあります。元請の全体手順と各社の責任者を一枚にまとめると運用しやすくなります。

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元請・下請・作業者の役割を分ける

立場主な確認事項
元請・元方事業者現場共通の報告先、緊急連絡網、搬送先、休憩場所、測定方法を調整し、全作業者へ伝える
下請・関係請負人自社の作業内容が対象条件に当たるか確認し、自社責任者を決め、作業者へ共通手順を周知する
職長・現場担当者朝礼時の体調、作業中の変化、休憩取得、一人作業者との連絡を確認する
作業者自分や周囲の異常を我慢せず報告し、決められた休憩・水分補給・連絡方法を守る

下請会社は「元請の掲示があるから対応済み」と考えず、自社の従業員が報告先と手順を理解しているか確認します。元請側も、警備員や一人親方など同じ場所で作業する人を連絡体制から漏らさないようにします。

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2026年7月は重点取組期間

厚生労働省の2026年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」は5月1日から9月30日まで実施され、7月が重点取組期間です。

2025年の職場における熱中症による死傷者は1,803人、うち死亡者は19人でした。建設業は292人、うち死亡5人で、死亡者数は業種別で最多です。キャンペーン要綱を作成した時点の速報値(1,681人・15人)から更新されているため、この記事では厚生労働省が2026年5月に公表した確定値を使用しています。

キャンペーンでは、WBGTの把握と活用、異常を早く見つける体制、重篤化防止の手順、糖尿病や高血圧症などを持つ人への医師等の意見を踏まえた配慮が重点です。WBGT測定などの予防策と、規則で義務づけられた報告体制・対応手順は区別したうえで、両方を実施します。

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現場条件ごとに追加する対策

  • 屋上・舗装・土工直射日光と照り返しを受けます。作業場所に近い位置で測定し、日陰への移動時間も休憩計画へ入れます。
  • 室内・地下・設備工事屋内でも風が通らず、熱源や高湿度がある場所は対象になります。屋外の天気予報だけで判断しません。
  • 防護服・フルハーネス着用作業身体から熱が逃げにくくなります。作業時間を短く区切り、脱装できる安全な休憩場所を確保します。
  • 一人作業・離れた作業場所異常を発見する人が近くにいません。定時連絡、巡視、バディ制など、連絡が途切れたときに確認する方法を決めます。
  • 新規入場者・休み明け暑さに身体が慣れていない可能性があります。作業強度や時間を段階的に上げ、本人申告だけに頼らず状態を確認します。

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現場で今日点検する7項目

  1. 現場のWBGTまたは気温を確認し、対象作業を特定する。
  2. 熱中症のおそれがある人を見つけたときの報告先を、掲示と朝礼で共有する。
  3. 作業中止、冷却、救急要請、搬送の判断手順を確認する。
  4. 近隣の医療機関、現場住所、救急車の進入経路を一覧にする。
  5. 元請・下請それぞれの責任者と代行者を決める。
  6. 一人作業や離れた場所での作業に、定時連絡や巡視を設定する。
  7. 健康診断結果や本人申告を踏まえ、必要な就業上の配慮を確認する。

異常がある人を一人で休ませたままにせず、回復を確認するまで見守り、必要に応じて医療機関へつなぐ運用まで具体化します。

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よくある勘違い

空調服や飲料を用意すれば義務を満たしますか?

それだけでは足りません。対象作業では、異常を報告する体制、重症化を防ぐ対応手順、それらの周知が必要です。

WBGT28度と気温31度の両方を超えたときだけ対象ですか?

どちらか一方です。WBGT28度以上または気温31度以上で、所定の作業時間が見込まれる場合に対象となります。

1日4時間ちょうどなら何もしなくてよいですか?

法令の時間条件は「1日当たり4時間を超える」ですが、連続1時間以上なら別の条件で対象です。条件未満でも危険があれば同様の対策を行い、症状があれば直ちに対応します。

元請が手順を作れば下請は対応不要ですか?

不要にはなりません。元請と、対象作業に労働者を従事させる関係請負人の双方に措置義務があります。共通手順を利用する場合も、自社作業者への周知と運用確認が必要です。

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ファクトチェックに使用した一次資料

制度の適用は個別の契約、申請時点、工事条件で異なります。この記事は公表資料をもとにした一般的な実務整理であり、個別案件は所管行政庁、労働基準監督署、専門家等へ確認してください。