
国土交通省の統計で建設資材が「需給均衡」でも、自社が使う塩ビ管や防水材の納期が読めるとは限りません。調査対象は生コンクリートや鋼材など7資材13品目で、シーリング材、塗料、断熱材などの指定品は含まれないからです。工事を止めないために、指定品、必要日、代替可否、価格変更の扱いを工事ごとに確認します。
Quick Summary
この記事の要点
- 統計の範囲6月1~5日の国交省調査は7資材13品目。塩ビ管、シーリング材、塗料、断熱材は対象外
- 現場で起きること総量不足だけでなく、加工品、商流、地域、取引条件の違いで納期回答や在庫配分に差が出る
- 今日すること工事別の資材表を作り、在庫の有無ではなく納品予定日、代替品の承認、追加費用を確認する
資材・取引管理
5月末に調達不安、6月には国交省が追加費用への対応を公表
2026年5月下旬以降、石油化学由来の資材をめぐる調達不安と、主要建設資材の統計が相次いで公表されました。結果だけを並べると食い違って見えますが、調べている資材と目的が違います。
| 時期 | 公表された内容 | 自社での読み方 |
|---|---|---|
| 5月21~31日 | 帝国データバンクの企業調査で、調達の不安定化や納期長期化が表面化 | 石油化学由来の加工品まで含む企業側の回答 |
| 6月1~5日 | 国交省の主要7資材13品目は、需給がすべて「均衡」 | 生コンや鋼材など、対象品目の市場全体を見る統計 |
| 6月16日 | 国交省が直轄工事で、代替調達に伴う追加運搬費などへの対応を説明 | 個別工事では契約と発注者を確認する |
国土交通省が6月1~5日に実施した主要建設資材需給・価格動向調査では、調査対象となった全資材の需給動向が「均衡」と判定されました。在庫状況を調べた骨材、鋼材、木材は「普通」です。
一方、価格はすべて横ばいではありません。アスファルト合材、異形棒鋼、H形鋼、型枠用合板、石油は前月比で「やや上昇」とされました。「均衡」は、価格が下がったことや、希望する商品を希望日に買えることを意味しません。
| 調査された資材 | 品目・規格の例 | 6月の需給 |
|---|---|---|
| セメント | バラ物 | 均衡 |
| 生コンクリート | 普通コンクリート | 均衡 |
| 骨材 | 砂、砂利、砕石、再生砕石 | 均衡 |
| アスファルト合材 | 新材、再生材 | 均衡 |
| 鋼材 | 異形棒鋼、H形鋼 | 均衡 |
| 木材 | 製材、型枠用合板 | 均衡 |
| 石油 | 軽油 | 均衡 |
資材・取引管理
塩ビ管やシーリング材は、同じ統計の対象ではない
現場で不足や納期遅延が話題になっているのは、塩ビ管、シーリング材、接着剤、塗料、シンナー、樹脂系断熱材など、ナフサ由来製品を含む加工品です。これらは国交省の7資材13品目には含まれていません。防水材の不足は、後段の事業者座談会で報告された現場例として確認します。
また、国交省調査は各モニターの回答を都道府県別に平均したものです。全国や都道府県の平均が「均衡」でも、特定メーカーの指定品、色、規格、ロット、配送地域、販売店の在庫まで保証するものではありません。統計は市場全体を見る資料、納期回答は自社の工事を動かす情報として分けて使います。
資材・取引管理
会社全体ではなく、工事別の資材表を先に作る
買い増しを決める前に、施工予定と必要日をつないだ表を作ります。少なくとも次の項目を工事番号ごとにそろえます。「引当」は、販売店が自社の注文分として在庫を確保した状態です。
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 指定品 | 資材名、メーカー、型番、規格、色、数量 |
| 必要日 | 現場搬入日、施工開始日、遅らせられる最終日 |
| 調達状況 | 見積中、在庫あり、引当済み、出荷予定、納品確定を区別 |
| 代替条件 | 代替候補、性能の確認者、設計者・発注者の承認状況 |
| 費用 | 材料差額、運搬費、保管費、再手配費、工程変更費 |
| 証拠 | 仕入先の回答日、見積有効期限、メール、協議記録 |
記入例(架空)
| 工事 | 指定品・必要数 | 必要日 | 調達状況 | 次の判断 |
|---|---|---|---|---|
| A邸外壁改修 | 指定シーリング材・グレー20本 | 8月5日 | 在庫回答あり、引当未確認 | 8月1日までに代替品を設計者へ確認 |
「在庫あり」だけでは、自社の工事分を確保できたとは限りません。引当、出荷予定、現場への納品確定を分けて残します。
資材・取引管理
調達支障の回答は、塗料や接着剤などの加工品に多い
ナフサは、プラスチック、塗料、接着剤などの原料になる石油製品です。帝国データバンクが2026年5月21~31日に4,604社から回答を得たナフサなど石油製品の供給状況調査では、原材料・部材の仕入コスト上昇が83.9%、調達の不安定・入手困難が73.0%、調達期間の長期化が50.2%でした。これは建設会社だけの比率ではなく、回答企業全体の状況です。
「最も調達上の支障が生じている資材」では、塗料、接着剤、シンナーなどの化学系加工資材が29.6%で最多でした。配管、断熱材、樹脂部品などの設備・建築・電子部材は13.9%です。この設問の集計母数は、無回答を除く4,136社です。
この結果は、加工品の供給支障がどの工程で生じたかまでは示していません。ただし、原料の市況だけでは、完成した指定品が自社へ届く日を判断できないことは分かります。
資材・取引管理
調達に支障が出ている資材の推定在庫は、建設業で24日分
同じ帝国データバンク調査では、支障が生じている資材の推定在庫量は、基礎素材・資源供給が50日分、一次加工が52日分、卸売・流通が39日分でした。川下側の建設業は24日分で、比較された区分の中で最も短い結果です。
建設資材は、単に同じ形の品物を補充すればよいとは限りません。工事ごとに図面、仕様書、認定、色、接続方法が違います。倉庫に別規格の在庫があっても、そのまま代用品にはできません。資材名ではなく、メーカー、型番、規格、必要数量、必要日までそろえて確認する理由はここにあります。
資材・取引管理
防水では、代替品へ変えても材料差額を回収できないことがある
屋根工事の現場職人による報告では、下葺き材の値上がりと調達難により、約2か月前に一度止まった工事があったと説明されています。その後、価格の高い代替材料で動き出した工事もありましたが、当初の請負金額は安い材料を前提に決まっていたため、差額を施工側が負担した事例が語られました。
防水・塗装、足場、外構、板金の経営者による座談会では、防水材本体だけでなく代替品も入りにくく、施工時期や顧客との調整に影響しているという発言があります。主催企業の告知でも、防水工事が止まると足場の解体や外構の着手へしわ寄せが及ぶこと、粘着系ルーフィングなどが不足していることが示されています。
これらは参加者の経験で、全国の発生率を示すものではありません。ただし、指定品がないときに「何を使うか」だけでなく、性能や保証の承認、材料差額、施工日の変更まで同時に決める必要があることは読み取れます。
資材・取引管理
直轄工事では、代替調達の追加運搬費も設計変更の対象に
「直轄工事」は、国土交通省が直接発注する工事です。国土交通省は6月16日、ナフサ由来資材の代替品調達や流通経路の見直しにより運搬費などの追加コストが生じた場合、受発注者の協議を経て設計変更で対応する運用を始めました。6月16日時点で契約済みの工事を含む、すべての国土交通省直轄工事が対象です。価格変動は、物価の変動に応じて請負代金を変更する契約上の仕組みであるスライド条項で扱います。
この運用は国土交通省の直轄工事に導入されたものです。民間工事や地方公共団体の工事に自動適用されるわけではありません。自社の工事では契約約款、特記仕様書、発注者からの通知を確認し、変更前に協議します。
資材・取引管理
契約前は「おそれ情報」と変更方法を残す
2024年12月13日に施行された改正建設業法では、主要な資機材の供給不足・遅延や価格高騰など、受発注者双方の責めに帰せない事象が工期または請負代金に影響するおそれを受注予定者が認識した場合、契約締結前に注文者へ関連情報を通知する必要があります。契約書には、価格などの変動に伴う工事内容・請負代金の変更と、その算定方法を記載します。
電話で「材料がない」と伝えるだけでは、いつ、何が、工事へどう響くかが残りません。通知や協議記録には、次のように具体的な事実を書きます。
| 対象資材 | 指定シーリング材・グレー |
|---|---|
| 仕入先回答 | 2026年7月26日時点で納期未定 |
| 工事への影響 | 8月5日の施工開始が遅れる可能性 |
| 協議したい内容 | 代替品の承認、工期、材料差額と追加運搬費の扱い |
法定の通知をした受注者から価格変更の協議を申し出た場合、民間の注文者には、正当な理由がある場合を除き誠実に協議へ応じる努力義務があり、公共工事の発注者には協議に応じる義務があります。事前通知がない場合でも、契約条項に基づく協議の申出そのものができなくなるわけではありません。
資材・取引管理
経営・購買・現場で確認する内容を分ける
- 経営者・工事部長納期遅延で止まる工事、先払い資金、値上げを吸収した場合の粗利を確認する
- 購買担当仕入先ごとの回答を同じ項目で残し、在庫、引当、出荷、納品確定を混同しない
- 現場責任者代替品が施工方法、納まり、認定、保証へ与える影響を確認し、承認前に使わない
- 見積・契約担当法定の対象に当たるおそれ情報を契約前に通知し、工期と請負代金の変更方法を契約書へ入れる
資材・取引管理
材料差額は、工事別の粗利と入金予定へ戻して確認する
代替品の差額や追加運搬費を施工会社が負担すると、その工事の粗利と資金繰りに響きます。値上げ幅だけで判断せず、工事別原価と入出金予定へ反映し、発注者と協議する金額を明確にします。
資材高だけでなく、人件費、外注費、価格転嫁の遅れが建設会社の経営へどう重なるかは、関連記事建設業の倒産・廃業は上半期5,937件で過去最多で整理しています。
資材・取引管理
「均衡なら待てば届く」と判断しない
| よくある判断 | 実際に確認すること |
|---|---|
| 全国で均衡だから問題ない | 指定品と地域別の納品予定日を仕入先へ確認する |
| 品不足が終われば価格も戻る | 最新見積と有効期限を取り直し、契約金額への反映を確認する |
| 同じ用途なら代替できる | 性能、認定、接続、納まり、保証と承認手続を確認する |
| 直轄工事の対応が全工事に使える | 自分の発注者と契約約款に適用される変更手続を確認する |
| 念のため全資材を買い増す | 工事別の必要日と資金繰りから、安全在庫の対象を限定する |
資材・取引管理
工程停止の影響が大きい3工事を選び、5項目を確認する
対象期間は、自社の通常の調達期間に余裕を加えて決めます。迷う場合は、まず今後60日を目安にしてください。
- 期間内に使う塩ビ管、防水材、シーリング材、塗料、断熱材を工事別に抽出する。
- 仕入先へ、在庫の有無ではなく「自社分の引当」「出荷予定日」「現場納品日」を聞く。
- 未確定品は、代替品の技術確認と発注者への通知を始める。
- 材料差額と追加運搬費を分け、見積書と契約書の変更方法を確認する。
- 工程表へ回答期限を入れ、確定しない場合に止める作業と先行できる作業を決める。
確認対象を全資材へ広げると、更新できない表になります。欠品すると工程全体が止まる資材を三つの工事から拾い、購買と現場で同じ表を更新します。
資材・取引管理
ファクトチェックに使用した資料
- 国土交通省主要建設資材需給・価格動向調査(2026年6月1~5日)
- 国土交通省中東情勢に伴う建設産業分野における対応状況
- 国土交通省直轄工事における代替資材調達等の追加コストへの対応
- 国土交通省第三次・担い手3法「価格転嫁」
- 国土交通省発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)
- 帝国データバンク中東情勢に伴うナフサなど石油製品供給状況に関する影響調査
- 大進工業座談会の出演業種と資材不足による工程影響
- YouTube動画現場職人による資材調達の報告(字幕確認)、複数工種の経営者による座談会(字幕確認)個別事業者の経験として参照し、統計値や制度の根拠には使用していません。
制度の適用は個別の契約、申請時点、工事条件で異なります。この記事は公表資料をもとにした一般的な実務整理であり、個別案件は所管行政庁、労働基準監督署、専門家等へ確認してください。