市場・受注・2026年6月分・7月31日公表

住宅着工18.6%増でも 人員・資材計画は急に広げない 8月は自社の受注残で判断

2026年6月は住宅着工が18.6%増える一方、大手50社の民間工事受注は22.5%減りました。二つの統計の違いと、8月の人員・資材計画を自社の受注残から判断する手順を整理します。

公開日
2026年7月31日
読了目安
約8分
対象
中堅住宅・建設会社の経営者、工事部門責任者
建築途中の木造住宅と遠景の中規模建築現場を対比したイメージ

国土交通省が7月31日に公表した6月分の統計では、新設住宅着工が前年同月比18.6%増えました。一方、大手建設会社の民間工事受注は22.5%減り、4カ月連続の減少です。二つは対象も単位も異なるため、数字は矛盾していません。この1カ月の統計だけで人員や資材の計画を拡大せず、直近6カ月の契約・着工と今後3カ月の受注残を先に確認します。

Quick Summary

この記事の要点

  • 住宅着工6万6,344戸で前年同月比18.6%増。ただし2026年1~6月では0.5%増
  • 大手50社受注総額は2.3%増でも、国内民間工事は22.5%減。公共工事が最大のプラス要因
  • 8月の判断確定契約と着工予定が3カ月の施工能力を超える場合に、人員確保や資材手配を検討

市場・受注

二つの統計は、そもそも違うものを測っている

住宅の「着工戸数」と、大手建設会社の「受注額」は別の指標です。調査対象、単位、計上時点も異なります。

住宅着工統計は、建築工事届に係る住宅の戸数や床面積を全数集計します。調査対象月は、原則として届出の受理時点、確認対象の建築物では確認済証の交付時点などで整理されます。

大手50社調査は、完成工事高が比較的大きく、国土交通大臣が指定した建設会社の受注額を集計します。請負契約を結んだ時点で受注として計上し、国内だけでなく海外工事も含みます。ただし、海外の現地法人分は含みません。名称は「大手50社」ですが、企業合併により現在の対象は49社です。

比較点住宅着工統計大手50社調査
主な対象建築工事届に係る住宅指定された大手建設会社
単位戸数、床面積受注額
計上時点原則として届出受理・確認済証交付の時点請負契約を結んだ時点
含む工事住宅住宅、非住宅、土木、海外など

数字の方向が違っても不自然ではありません。同じ指標のように足したり、一方で他方を否定したりしないことが重要です。

市場・受注

18.6%増でも、着工戸数は2年前とほぼ同じ

6月の新設住宅着工は6万6,344戸で、前年同月比18.6%増でした。持家、貸家、分譲住宅のすべてが増え、増加は3カ月連続です。

ただし、比較対象の2025年6月は5万5,956戸で、その前年から15.6%減っていました。2026年6月の大きな伸びには、低かった前年同月との比較も含まれます。

2年前の2024年6月は6万6,287戸でした。2026年6月との差は57戸です。

期間を6カ月へ広げると見え方は変わります。2026年1~6月は36万3,813戸で、前年同期比は0.5%増です。上期全体では、単月の18.6%増ほどの伸びではありません。

単月の増加率を、そのまま年間の市場成長率として事業計画へ置かない方が安全です。

市場・受注

着工の増え方は、住宅の種類と地域でそろっていない

全国合計は増えましたが、内訳には差があります。

住宅の種類2026年6月前年同月比
持家1万8,553戸15.7%増
貸家3万253戸24.6%増
分譲住宅1万7,211戸14.2%増
分譲マンション6,048戸1.7%増
分譲一戸建住宅1万861戸21.7%増
ツーバイフォー住宅7,181戸7.4%減

分譲マンションは、首都圏で14.5%減、中部圏で21.1%減でした。一方、近畿圏では19.9%増、三大都市圏以外のその他地域では33.2%増です。

全国合計が伸びても、自社が扱う工法や地域で同じ動きになるとは限りません。住宅会社は「持家か貸家か」まで、専門工事会社は「戸建てか共同住宅か」まで分けて、自社の引き合いと照合します。

市場・受注

大手50社の総受注2.3%増は、民間工事の回復を意味しない

大手50社の6月受注総額は1兆7,212億円で、前年同月比2.3%増でした。しかし、国内民間工事は9,724億円で22.5%減っています。

前年同月差の最大のプラス要因は公共工事でした。公共工事は6,339億円で118.5%増となり、国の機関からの受注は232.4%増でした。海外工事は577億円で30.3%減っています。

受注総額は国内計と海外工事の合計です。国内計には民間、公共のほか、駐留軍・外国公館と小口工事をまとめた「その他」も含まれます。

民間では運輸業、製造業、不動産業などが減少し、工事種類別でも建築が減っています。民間建築を主力とする会社が、総受注額2.3%増を根拠に強気の計画へ変えるのは早計です。

市場・受注

自社の先行きを見るなら、受注から着工までをつなぐ

経営会議では、国の統計を自社の数字と並べて使います。まず確認したいのは、直近6カ月の問い合わせ、見積提出、契約、着工、受注残です。

住宅着工が増えていても、自社の見積件数だけ減っているなら、地域需要ではなく集客や商品構成に課題がある可能性があります。反対に契約は増えているのに着工が進まない場合は、確認申請、設計、資材、協力会社のどこで滞留しているかを見ます。

受注残は金額だけでなく、着工予定月と必要職種を付けます。今後3カ月の施工能力と重ねると、採用や外注の判断がしやすくなります。

確定契約と着工予定が今後3カ月の施工能力を上回るなら、協力会社の確保や資材の先行手配を検討します。問い合わせだけが増え、契約に結び付いていない段階では、恒常的な増員や大量発注を急ぎません。

人員・資材計画は三段階に分ける

自社の状態先に行うこと避けたい判断
確定契約が施工能力を超える必要職種と時期を特定し、協力会社の確保、納期の長い資材の手配を検討する案件を区別せず、全職種を一律に増員する
確定契約と施工能力がほぼ同じ着工の遅れと工程重複を週単位で確認し、応援を頼む条件を決める全国統計だけを理由に大量発注する
問い合わせは増えたが契約前見積から契約へ進む割合と失注理由を確認する売上へつながる前に固定人員や在庫を増やす

施工能力は人数だけでは決まりません。現場監督、設計、申請、専門職、資材の納期のうち、最初に詰まる工程を基準にします。契約額が増えていても、同じ月へ着工が集中すれば一時的な不足が起こり、月をずらせる案件が多ければ恒常的な増員を避けられます。採用、外注、残業、着工時期の調整を同じ表で比べてください。判断日と前提にした案件名も残しておくと、翌月に見直す際に、統計ではなく自社のどの変化で計画を変えたかを追えます。

市場・受注

自社の主力別に、統計と照合する数字を変える

主力分野国の統計で見る数字自社で優先して見る数字
注文住宅持家の着工戸数商圏内の来場、見積、契約、確認申請
賃貸住宅貸家の着工戸数地域の空室率、建築主の融資条件、案件規模
大型民間建築の協力工事大手50社の民間受注主要元請の手持ち案件、自社への見積依頼、発注予定時期

前年同月比だけでなく、直近3カ月の平均も並べると、単月のぶれをならして見られます。大型民間建築でも、1カ月の受注減だけを理由に発注量を絞らず、自社へ届く引き合いと合わせて判断します。

市場・受注

8月の経営会議で確認する5項目

今回の統計を受けて、全社計画を急に変える必要はありません。自社データとのずれを探す方が先です。

  1. 直近6カ月の問い合わせ、見積、契約、着工を同じ表へ並べる。
  2. 受注残へ着工予定月、地域、工事種別、必要職種を付ける。
  3. 前年同月比だけでなく、前月比と直近3カ月の平均を並べる。
  4. 住宅、民間非住宅、公共工事を分けて粗利と入金予定を確認する。
  5. 確定契約と着工予定が施工能力を超える場合だけ、人員確保や資材の先行手配を検討する。

国の月次統計は、自社の売上予測そのものではありません。市場と自社の動きが同じか、違うならどこで差が生まれているかを確認するための基準線として使います。

市場・受注

ファクトチェックに使用した一次資料

この記事は国土交通省の公表資料をもとに、月次統計の読み方を整理したものです。個別企業の受注見通しや投資判断を示すものではありません。